HRインフォメーション(2016年4月)

厚労省が指針を公表!

  「長期治療が必要な従業員」への対応のポイント

2月下旬に指針公表

人手不足が深刻化しつつある中、女性や高齢者、障害者など、多様な人材の活用が重要になっています。

また、近年はがんや心臓病、脳卒中など長期にわたる治療が必要な疾病を抱えながら働く従業員も増えてきましたが、これらの方を支援する環境が整っている企業はまだまだ少ないのが現状です。

そんな中、厚生労働省は、がん患者等の離職を防止し、治療を受けながら働き続けられるようにするため、企業が実施する支援策などを示した指針(事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン)を2月下旬に公表しました。

 

指針の特徴は?

この指針では、職場における意識啓発のための研修や治療と職業生活を両立しやすい休暇制度・勤務制度の導入などの環境整備、治療と職業生活の両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項をとりまとめています。

指針のポイント

今回の指針のポイントは以下の通りです。

 

長期治療が必要な従業員に対しても配慮するため、企業には主に以下の内容を参考にした取組みが求められることになります。

(1)治療と職業生活の両立支援を行うための環境整備

 ・労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口を明確化

 ・時間単位の休暇制度、時差出勤制度などを検討・導入

 ・主治医に対して業務内容などを提供するための様式等を整備

(2)治療と職業生活の両立支援の進め方

 ・労働者が事業者に支援を求める申出(主治医による配慮事項などに関する意見書を提出)

 ・事業者が就業上の措置などを決定・実施(「両立支援プラン」の作成が望ましい)

(3)がんに関する留意事項

 ・治療の長期化や予期せぬ副作用による影響に応じた対応の必要性

 ・がんの診断を受けた労働者のメンタルヘルス面へ配慮

職場の理解・協力が不可欠

ある調査では、がん罹患後も離職せず、同じ勤務先で仕事を継続できた最大の理由は「職場の上司や同僚の理解・協力があったため」との結果が出ています。

職場の環境整備とともに、重要なポイントの1つと言えるでしょう。

 

 

法人代表者等が事業場の産業医を兼任することが禁止に

                     (来年4月から)

改正の趣旨

産業医については、労働安全衛生法13条1項の規定において、事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから選任することとされています。

一方で、産業医として選任できる者の事業場等における役職については、法または労働安全衛生規則で制限されていないため、「企業の代表取締役」、「医療法人の理事長」、「病院の院長」等が産業医を兼務している事例が多くあります。

しかし、労働者の健康管理は一定の費用を伴うものであるため、事業経営の利益の帰属主体(事業者)の代表者や事業場においてその事業の実施を統括管理する者が産業医を兼務した場合には、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、産業医としての職務が適切に遂行されないおそれがあります。

 

今回の改正内容

上記の理由から、来年4月から事業者は産業医を選任するにあたって、「一定の者」を選任してはならないこととなります。

すなわち、事業者は、産業医を選任するにあたって、「法人の代表者」もしくは「事業を営む個人(ただし、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く)」または「事業場においてその事業の実施を統括管理する者」を選任してはならないこととなります。

来年4月施行予定

先日、厚生労働大臣は労働政策審議会に対して、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問を行いました。

この諮問を受け、同審議会安全衛生分科会で審議が行われ、同審議会から「妥当である」との答申がありました。

厚生労働省は、この答申を踏まえ、省令の改正作業を進めることになり、平成29年4月1日から施行される予定です。

監督対象事業場の23.7%で労働時間が「過労死基準」超え!

「過重労働解消キャンペーン」重点監督実施結果

厚生労働省が行った「過重労働解消キャンペーン」(昨年11月実施)の重点監督において、監督指導を実施した5,031事業場のうち、73.9%に当たる3,718事業場で労働基準関係法令違反が認められました(2月23日発表)。

最も多かったのは「違法な時間外労働」で、全体の45.9%に当たる2,311事業場が摘発されています。

 

過酷な長時間労働の実態が浮彫りに

違法な時間外労働があった事業場において、時間外・休日労働が最長の者の実績を見ると、80時間超100時間以下が396事業場、100時間超150時間以下が646事業場、150時間超200時間以下が115事業場で、200時間を超えている事業場も38事業場ありました。

厚生労働省が過労死のリスクが高まると位置付ける「過労死ライン」を超えている事業場は、今回の対策対象事業場の23.7%にも上ります。

過酷な長時間労働の実態が浮彫りとなったと言えます。

 

過重労働をなくすために

同省は、「今後も、月100時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組みを積極的に行っていく」としています。

過重労働の解消を図るためには、企業において仕事量の調整や適切な労働時間管理、健康障害防止対策などの取組みを進めることが重要です。

改めて自社の状況を確認するとともに、多数公表されている実務面における過重労働改善取組事例なども参考にして、必要な対策を講じていきましょう。

4月から「不服申立て制度」が大きく変わります!

約50年ぶりの改正

行政不服審査法が約50年ぶりに改正され4月から施行されることに伴い、労災保険法をはじめ、雇用保険法、労働保険徴収法、健康保険法、厚生年金保険法など、労働・社会保険の不服申立て制度が変わります。

「審査請求期間の延長」や、「不服申立て前置の一部廃止」などにより、国民の利便性が向上することが期待されています。

 

「不服申立て」とは?

行政庁の違法不当な処分その他公権力の行使・不行使について、行政庁に対してする救済手段のことです。

労働・社会保険の分野には、不服申立てに関する特別法(労働保険審査官及び労働保険審査会法、社会保険審査官及び社会保険審査会法)があり、労災保険や健康保険法などにも不服申立てについて定めた条文があります。

 

主な改正点は?

今回の改正の主なポイントは次の通りです。

 

(1)不服申立てをすることができる期間が60日から3カ月に延長されます。

(2)不服申立ての手続きを審査請求に一本化し、処分庁に対する異議申立ては廃止されます。

(3)処分取消の訴え(裁判所に提訴)は、審査請求・再審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起することはで

  きないとする「不服申立て前置」が一部廃止され、裁決を経なくても処分の取消しの訴えを提起することができる

  ようになります。

 

不服申立ての流れ(労災保険の場合)

例えば、労災保険の「保険給付に関する決定」に不服がある者は、原処分のあったことを知った日の翌日から起算して3カ月以内に、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をすることができます。

そして、審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定にさらに不服がある場合には、労働保険審査会に対して再審査請求するか、処分の取消しの訴えを裁判所に提起するか、このどちらかを選ぶことができます。

 

もちろん、処分の取消しの訴えは、これまで通り労働保険審査会の裁決後に提起することもできます。

労災保険の「保険給付に関する決定」の例を挙げましたが、労働保険・社会保険等は、ほぼ同様の仕組みとなっています。

 

 

企業に広がる有期契約労働者の「無期転換」の動き

再来年4月から本格適用

2013年4月に施行された、有期契約の労働者でも、契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合に無期契約への転換を求める権利が与えられる労働契約法18条のいわゆる「5年ルール」の規定が、再来年の2018年4月から順次適用になります。

有期契約が更新されない「雇止め」の不安を解消し、安定して働けるようにするのが目的とされています。

 

「無期契約」に変える企業が増加

ここ最近、パート社員や契約社員などの「有期契約」で働く人を「無期契約」に変える企業が増えているようです。背景には「人手不足の中で人材を安定的に確保したい」という考えがあるようです。

労働政策研究・研修機構の調査(2015年7~9月)によると、法改正に対応し何らかの方法で「無期にしていく」と回答した企業は6割を超えました。

厚生労働省では、ホームページ上で導入企業の実例(現時点で9社)を紹介しています。

 

当初の懸念はあたらず?

法改正時に心配されていたのは、企業が無期転換を避けるために5年より前に「雇止め」にしたり、強引に5年以内の契約上限を設けたりするという動きでした。しかし、今のところそうした動きは少ないようです。

企業側も、無期にするメリットとして「長期勤続が期待できる」「要員を安定的に確保できる」という理由を挙げた割合が増えているようです。

景気の回復基調のなか、人手不足により人材を囲い込むメリットがあると考える企業が増えています。

 

経団連も検討を後押し

経団連は、今後は人材獲得が困難になるとして、「無期転換の仕組みを整備することは労働者への大きなアピールとなり、前向きに検討すべきだ」としています。

ただ、企業は無期転換しても賃金を変える必要はありません。労働政策研究・研修機構の調査でも4分の1程度の企業が「対応方針は未定・わからない」と答えています。

 

 

「仕事と介護の両立問題」に対応するための法改正&新設助成金

年間10万人超の介護離転職者が発生

内閣府の「2015年版高齢社会白書」によると、2011年10月から2012年9月までにおける介護や看護を理由とする離転職者数は10万1,001人だったそうです。

離転職者の内訳は、男女ともに50代および60代が約7割を占め、企業にとっては要職者を失うリスクにさらされていると言えます。

また、この問題は団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降に一層深刻になると見られていることから、法改正と助成金の新設・拡充の両面で対策に取り組む動きがあります。

企業としては、人材確保のためにもこうした動きを押さえておく必要があります。

 

「介護離職ゼロ」に向けた改正法案の審議スタート

国会では、育児や介護と仕事の両立を支援する雇用保険法などの改正案が3月8日に審議入りしました。

法案では、93日までの連続取得という制度設計で、利用率が低迷していた介護休業制度を最大3回までの分割取得を可能とするほか、対象家族を非同居・非扶養の祖父母や兄弟姉妹、孫にも拡大するとしています。

また、介護休業者の所得保障となる介護休業給付金の支給率について、休業前賃金の40%から67%に引き上げるとしています。

さらに、育児と仕事の両立支援や高年齢者の就労支援の施策も盛り込まれており、政府・与党は3月中に法案を成立させ、4月以降順次施行したい考えです。

 

助成金の新設

厚生労働省は、2016年度より「介護支援取組助成金」(仮称)を新設することを公表しました。

(1)従業員の仕事と介護の両立に関する社内アンケート実施、(2)介護に直面する前の従業員への社内研修の実施、リーフレットの配布、(3)介護に直面した従業員向け相談窓口の設置および周知を行った企業に対し、60万円を支給するものです。

 

助成金の拡充

「中小企業両立支援助成金 育休復帰支援プランコース」は、正社員、期間雇用者それぞれ1人について、社会保険労務士など専門家のアドバイスのもと「育休復帰支援プラン」を策定し、育休取得したときに30万円、職場復帰したときに30万円を支給するものですが、拡充後は、早ければ10月から介護休業についても対象となる予定です。

 

平成27年の労働災害発生状況にみる課題とは?

全体では微減だが…

平成27年における死傷災害発生状況(2月速報)が発表されました。産業全体として前年比などを見た場合、死傷災害はわずかに減少しています。

しかし、その内訳を見てみると、「建設業」や「製造業」では大きく減っているものの、近年の傾向として第三次産業での災害が大きく増加しています。

その中でも特に増加しているのが「保健衛生業」です。介護士・看護師など病院や社会福祉施設で働く方が該当します。

 

平成25年時点と比較して社会福祉施設での死傷災害は15.9%増加しているということです。

 

腰痛と労働者の高齢化

保健衛生業については、「動作の反動・無理な動作」が特に多く、腰痛が職業病のようになっています。次いで、「転倒」も多くなっています。

また、社会福祉施設では、死傷災害の半数が40歳から59歳の層で発生しているというデータもあり、これからの労働力人口の高齢化と併せて、この点はますます重要な課題となるでしょう。

厚生労働省でも、こうした災害防止のための指針等を作成するなどの施策は行っているようですが、一向に減る傾向はありません。

 

介護ロボット等の普及にも時間がかかる

最近では、介護を支援するロボット等、人間の労働をアシストするようなロボット・機器市場が注目されつつあります。しかし、どんな事業所でも導入できるというほどまでにはなっていないようです。

介護機器の導入により、腰痛による休業、早期退職、退職に伴う交代要員の補充等、労務管理面でも手間の軽減に効果があるとされていますが、現状では、現場で業務にあたる個々人の体の使い方を含めた就労環境を見直していくことで対処するのが現実的かつ必要なことのようです。

また、腰痛は体の局所的な酷使のほか、ストレスによっても誘発される場合もあります。

 

ストレスチェック制度がスタートし、これから健康診断のシーズンを迎えますので、この機会に安全衛生や健康管理体制の整備状況について確認してみてはいかがでしょうか。

 

社員の転職理由の「本音」と「建て前」

転職市場は盛況

株式会社インテリジェンスが発表した「DODA 転職求人倍率レポート」によると、2016年2月の転職求人数は前月比104.9%・前年同月比145.3%となり、15カ月連続で、調査開始2008年1月以来の最高値を更新しているそうです。

転職希望者数も前月比6.5%増、前年同月比56.8%増となり、6カ月連続で最高値を更新しており、転職市場は引き続き盛況なようです。

このような人材の活発な流動化中では、企業にとっては人材確保が大きな問題になります。

 

会社に伝える退職理由と本当の理由

転職する場合、当然ながら現在の仕事を辞めなければなりません。社員の退職理由からは、会社の問題点が浮き彫りになることもありますが、会社に退職の意思を伝えてくる際の退職理由が本音ばかりとは限りません。

エン・ジャパン株式会社が行った「退職理由のホンネとタテマエ」についてのアンケート調査(回答1,515名)によると、 約半数の人が会社に本当の退職理由を伝えていないことがわかりました。

会社に伝えた退職理由と本当の退職理由は以下のようなものです。

【会社に伝えた退職理由】

(1)結婚、家庭の事情(23%)

(2)体調を崩した(18%)

(3)仕事内容(14%)

【本当の理由】

(1)人間関係(25%)

(2)評価・人事制度(12%)

(3)社風や風土、給与、拘束時間(各11%)

 

社員の本音から考える

この調査からわかることは、社員が伝える退職理由は本音からは離れていることがままあるということです。

退職者が多い会社というのは、「本当の理由」として挙がっている例から想像される通り、相対的に会社の雰囲気が悪かったり、待遇面で不満を持つ社員が多かったりする会社とも見られてしまうわけですから、求職者も離れていきます。

退職者の本音と建て前を見極めながら対策を講じていくことも必要でしょう。

 

 

約3割の女性が職場でセクハラ被害! 厚労省の今後の取組みは?

厚労省が初のセクハラ実態調査

厚生労働省がセクハラ等に関する初の実態調査を実施し、就労経験のある女性のうち職場でセクハラ被害を受けたと答えた人が28.7%に上ったことがわかりました。

調査対象者は従業員10人以上の企業6,500社で働く25~44歳の女性従業員2万6,000人(有効回答者17.8%)で、これに加えて5,000人にインターネットを通じて行ったものです。

 

被害内容と被害を受けた女性の対応は?

セクハラ被害の内容で多かったのは「容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた」(53.9%)や「不必要に身体に触られた」(40.1%)で、「性的関係を求められた」(16.8%)と深刻な事例も見られました。

また、女性の対応として最も多かったのは「我慢した、特に何もしなかった」(63.4%)で、多くのケースで泣き寝入りしていたことがわかりました。

なお、いわゆるマタハラなど、妊娠を理由とする不利益取扱いの経験率は21.4%で、上司だけではなく同僚からも行われ、男性だけではなく女性から行われるケースもあるようです。

 

今後の取組み

同省は、今年4月から全国の47労働局に「雇用環境・均等部」を新設し、パワハラやマタハラ等の相談を一括で受けたり、企業への行政指導や啓発を強化したりする方針です。

現状では、セクハラ・マタハラの相談窓口は「雇用均等室」、パワハラは「労働基準部」「総務部」といったように、相互に関係する業務でありながらも相談先が分かれています。

そのため、様々なハラスメントを同時に受けた場合に別々の窓口をたらい回しにされるケースもあったことから、体制が見直されることとなりました。

 

ハラスメントのない職場づくりへ

近年、職場では様々なハラスメントが増加しており、寄せられるハラスメントに関する相談件数は依然として高い水準を保っています。

ハラスメントは職場の士気や能率の低下にもつながり、場合によっては命にかかわる事態や訴訟へ発展する事態も起こり得ます。

企業としてもハラスメントが重大な問題であることを認識しなければなりません。

 

「労働移動支援助成金」悪用による影響で支給要件厳格化へ

助成金を利用してリストラ?

厚生労働省は、人材会社が「労働移動支援助成金」を利用して退職勧奨を行っているという指摘を受け、4月から支給要件を厳格化する方針を固めたようです。

これは、人材会社が人員削減等を計画する企業にリストラのノウハウを提供し、対象となった従業員の再就職支援の委託費用の一部を人材会社が利益として得ているとして、国会で問題視されていたものです。

また、人材会社が関与したケースでは、企業が評価の低い「非戦力(ローパフォーマンス)社員」をリストアップし、退職を迫っていた例もあったようです。

 

助成金の概要

労働移動支援助成金は、事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇を付与したりする事業主に支給する制度です。

平成26年3月より、送り出し企業に支給される再就職支援奨励金の支給対象が拡充され、中小企業だけでなく大企業にも支給されることになりました。また、受入れ人材育成支援奨励金が創設されています。

 

支給要件厳格化の具体的な内容

今後、厚生労働省は企業が助成金を申請する際に、退職者本人の署名や住所の記入を求めることに加え、人材会社が企業にリストラを提案したりしなかったかどうかを確認し、問題があった企業には助成金の返還を求めることを検討しています(具体的な要件は3月末に決定する予定)。

今後、労働移動支援助成金を利用する際には、従業員の意思を尊重し、退職勧奨とならないように十分注意する必要があります。

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