「ひとり親控除、寡婦(夫)控除の見直しは令和2年分の年末調整から」をはじめ、計4本のHR関係情報をお届けします。

●ひとり親控除、寡婦(夫)控除の見直しは
令和2年分の年末調整から●
令和2年度税制改正により、未婚のひとり親と婚姻歴のあるひとり親との間にある税制上の格差が解消され、また、寡婦(夫)控除における男女差が見直されました。ひとり親であれば、未婚・離婚・死別、性別にかかわらず、「ひとり親控除」が適用されます。
改正の概要は、次のとおりです。
① 未婚のひとり親に対する税制上の措置
イ 居住者がひとり親(現に婚姻をしていない者または配偶者の生死の明らかでない一定
の者のうち、次に掲げる要件を満たすものをいう。)である場合には、ひとり親控除
として、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額または山林所得金額から35万
円(住民税は30万円)を控除することとされました。
a.その者と生計を一にする一定の子を有すること。
b.合計所得金額が500万円以下であること。
c.その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の者がいないこと。
ロ 上記イのひとり親控除は、給与等および公的年金等の源泉徴収の際に適用できること
とされました。
② 寡婦(夫)控除の見直し
寡婦の要件について次の見直しを行った上で、寡婦(夫)控除をひとり親に該当しない
寡婦に係る寡婦控除に改組することとされました(控除額は所得税27万円、住民税26万
円)。
イ 扶養親族を有する寡婦についても、上記①イbの要件が追加されました。
ロ 上記①イcの要件が追加されました。
また、寡婦控除の特例(いわゆる「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特別加
算)を廃止することとされました。
「寡婦」とは、次に掲げる者でひとり親に該当しないものをいいます。
① 夫と離婚した後婚姻をしていない者のうち、次に掲げる要件を満たすもの
イ 扶養親族を有すること。
ロ 合計所得金額が500万円以下であること。
ハ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと
② 夫と死別した後婚姻をしていない者または夫の生死の明らかでない一定の者のうち、次
に掲げる要件を満たすもの
イ 合計所得金額が500万円以下であること。
ロ その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと。
この改正は、令和2年分以後の年末調整および確定申告において適用されます。また、月々の源泉徴収においては、令和3年1月1日以後に支払うべき給与等および公的年金等について適用されます。個人住民税については、令和3年度分以後について適用されるものです。
●感染拡大による働き方と意識の変化
~日本生産性本部の調査結果●
新型コロナウイルス感染症は、組織で働く人の意識にどんな変化をもたらしているのか。日本生産性本部が、政府による緊急事態宣言の発出から約1か月後の5月11日~13日に20歳以上の日本の雇用者(就業者から自営業者、家族従業者等を除く)1,100名を対象にインターネットを通じて行った第1回の調査結果を公表しました。
結果によると、労働時間・業務量・余暇時間とも「特に増減は無い」が4割以上。労働時間は43.2%、業務量は37.6%が「減少した」と回答した一方、余暇時間は42.8%が「増加した」と回答しました。労働時間の増減は業種による差が大きく、特に宿泊業では100%、飲食サービス業では89.2%で「減少した」と答えました。
また、勤め先の業績(65.3%)、今後の自分自身の雇用(47.7%)、今後の収入(61.8%)のいずれも「不安」を感じている人が多いという結果が出ています。ただし、今後の雇用への不安感は業種による差が大きく、宿泊業(85.7%)、飲食サービス業(75.7%)、医療・福祉(65.0%)、生活関連サービス業(63.0%)で「不安」の割合が多くなっています。
一方、勤め先による健康への配慮は、雇用形態や性別等の属性にかかわらず68.7%が肯定的で、信頼の程度は、性別・雇用形態等の属性に関係なく「信頼している」「まずまず信頼している」が約7割、「あまり信頼していない」「信頼していない」が約3割でした。
働き方については、「特に変化はない」が40.7%で最多、「多少変わった」が35.0%、「大きく変わった」が24.3%でした。職種別に見ると、「専門的・技術的な仕事」「管理的な仕事」で3割以上が「大きく変わった」一方、「生産工程の仕事」「輸送・機械運転の仕事」「建設・採掘の仕事」「運搬・清掃・包装等の仕事」では6~7割が「特に変化はない」としています。
また、柔軟な働き方の施策については、「特にない」が46.3%で最多。「自宅での勤務」29.0%、「時差出勤」16.3%、「短時間勤務」15.4%で、柔軟な働き方が一般化したとまでは言えない状況です。ただ、直近1週間の出勤日(営業日ベース)については、「1~2日」が37.3%で最多、「0日」32.1%、「3~4日」21.1%、「5日以上」9.5%で、2日以下の出勤が約7割を占めました。
テレワーク実施における課題については、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」48.8%が最多で、以下「Wi-Fiなど、通信環境の整備」45.1%、「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」43.9%などが続きました。「特に課題は感じていない」は8.4%にとどまり、多くの人が現状に不都合を感じていることが分かります。
一方で、新型コロナウイルス収束後もテレワークを継続したいかについては、「そう思う」24.3%、「どちらかと言えばそう思う」38.4%と、6割強が肯定的でした。
ある程度予想された結果も多いといえますが、これらの具体的な数字も踏まえ、企業としては、今後予測される新型コロナウイルスの第2波・第3波への備えはもちろん、多様な働き方を取り入れながら生産性を高められるよう、社内インフラの整備や社員教育、制度改革が求められることになりそうです。
<参 考>
日本生産性本部「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」結果
●新型コロナ感染症による雇用への影響に関する
厚労省調査から●
新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について、厚生労働省は全国の都道府県労働局および公共職業安定所(ハローワーク)を通じて事業所に対する任意の聞き取り等により把握した状況を取りまとめました。
5月25日からは、非正規労働者の解雇や雇止めの見込みを集計し始めまています。それでは、初めて公表された5月29日分、1週間後の6月5日分の内容を紹介しましょう。
《5月29日の集計分》
雇用調整の可能性がある事業所数…全国30,214事業所
解雇等見込み労働者数…全国16,723人
解雇等見込み労働者数のうち非正規雇用労働者数…全国2,366人
【業種別】雇用調整の可能性がある事業所数(上位3業種、単位:件)
1位…製造業(6,298)
2位…飲食業(4,760)
3位…小売業(3,028)
【業種別】解雇等見込み労働者数(上位3業種、単位:人)
1位…宿泊業(3,702。うち非正規568)
2位…道路旅客運送業(2,287。うち非正規164)
3位…製造業(2,269。うち非正規320)
【都道府県別】雇用調整の可能性がある事業所数(上位3業種、単位:件)
1位…北海道(2,446)
2位…東京(2,291)
3位…岩手(1,648)
【都道府県別】解雇等見込み労働者数(上位3業種、単位:人)
1位…東京(2,495)
2位…大阪(1,789)
3位…北海道(1,025)
《6月5日の集計分》
雇用調整の可能性がある事業所数:全国で35,482事業所(+5,268事務所)
解雇等見込み労働者数:全国20,933人(+4,210人)
解雇等見込み労働者数のうち非正規雇用労働者数:全国4,943人(+2,577人)
【業種別】雇用調整の可能性がある事業所数(上位3業種、単位:件)
1位…製造業(7,215)
2位…飲食業(5,475)
3位…小売業(3,596)
【業種別】解雇等見込み労働者数(上位3業種、単位:人)
1位…宿泊業(4,348。うち非正規290)
2位…飲食業(3,484。うち非正規1,075)
3位…製造業(2,813。うち非正規221)
【都道府県別】雇用調整の可能性がある事業所数(上位3業種、単位:件)
1位…東京(3,611)
2位…北海道(2,929)
3位…千葉(2,301)
【都道府県別】解雇等見込み労働者数(上位3業種、単位:人)
1位…東京(3,164)
2位…大阪(2,998)
3位…北海道(1,149)
この1週間で雇用調整予定の事業所は5,268件増え、解雇等の見込み数も4,210人増えています。そのうち非正規労働者は2,577人と、半数以上を占めており、失職しやすくなっている現状がうかがえます。
●中小企業の働き方改革関連法の認知度・準備状況は?
~日本・東京商工会議所調査●
働き方改革関連法の施策の中で、今年の4月からは、「時間外労働の上限規制」の中小企業への適用が始まりました。今年は新型コロナウイルスの影響により、様々な法改正情報を目や耳にする機会が減ってしまった印象ですが、働き方改革の大きなテーマの1つである「同一労働同一賃金」も、来年の4月から中小企業への適用が始まりますので、今から準備が必要になります。
日本・東京商工会議所が実施した「人手不足の状況、働き方改革関連法への対応に関する調査」(調査期間:2020年2月3日~3月6日、回答企業数:全国の中小企業2,838社(回答率:68.8%))によると、「時間外労働の上限規制」の名称・内容について、認知が十分でない企業の割合は16.2%となっています。また、施行時期を「知らない」とした割合は、従業員規模50人以下の企業で19.9%と、約2割にも上っており、施行直前の時期においても、まだ認知度自体が十分ではないという実態がわかる結果となっています。
来年4月から中小企業にも適用される「同一労働同一賃金」については、まだ25.7%の企業が、認知が十分ではないと回答しています。従業員規模50人以下の企業では、32.9%が施行時期を「知らない」と回答しており、内容だけでなく施行時期の周知も求められるところです。
また、「対象になりそうな非正規社員がいる」との回答は23.4%でしたが、そのうち「対応の目途がついている企業」の割合は46.7%にとどまっています。中小企業への施行まで1年を切る中、まだ半数の企業は対応ができていないことがわかります。
本調査によれば、「同一労働同一賃金」について講じた対応策や対応予定の方策としては、「非正規社員の給与等の処遇改善」(47.5%)、「賃金・人事制度の構築・見直し」(36.4%)、「正規/非正規の業務内容・配置の見直し」(35.8%)、「非正規社員の正社員化」(27.1%)が挙がっています。どのような対応をとるにせよ、ある程度の準備期間が必要になりますので、未対応の企業は、早めの検討・取組みが必要になります。
<参 考>