リーダーの「余計な一言」の減らし方

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


部下との会話の中で、言う必要のない「余計な一言」を口にしてしまうリーダーは少なくない。今回は、リーダーが「余計な一言」を口にしてしまう仕組みと部下に及ぼす心理的影響、「余計な一言」をなるべく口にしないための方策などを考えてみよう。



その一言は何のため?

具体例で考えよう。


例えば、課長が部下に資料作成の進捗状況を尋ねたところ、部下は「半分程度できました」と報告したとする。その資料を使用するのは来月なので、時間には十分な余裕がある状態である。このような状況下で、報告を受けた課長は部下に対し、「まだ、半分しかできていないのか。今週中には仕上がりそうか」と言ったとする。果たして、この課長の発言に「余計な一言」は含まれているだろうか。


課長の発言の後段である「今週中には仕上がりそうか」という部分は、資料作成の進捗を確認したいという『目的を達成するための発言』といえる。


それでは、課長の発言の前段である「まだ、半分しかできていないのか」という部分は、何のために発せられた言葉だろうか。仮に、資料作成が予定よりも大幅に遅れているなどの事情があれば、作業の遅延を戒める『注意喚起のための発言』といえよう。


しかしながら、本事例では時間には十分な余裕がある状況のため、部下に注意喚起を行う必要がない。果たして、この課長は何の目的で「まだ、半分しかできていないのか」と口にしたのだろうか。


ストレス発散目的で不必要に発せられる「嫌み」「説教がましい言葉」

組織内で明確な上下関係が存在する場合に、上の者が下の者に対して不必要に嫌みや説教がましい言葉など、相手に対する “マイナスの発言” を口にすることがある。前述の課長が、時間に余裕があるにもかかわらず、部下に対して「まだ、半分しかできていないのか」と発言したのも、不必要な嫌みや説教がましい言葉の一例といえよう。このような発言は、本来、行う必要がないものである。


必要がないにもかかわらず、上司が部下に対して対して “マイナスの発言” を行う理由はさまざまである。例えば、上司がその部下のことを快く思っていないケースで、不必要に嫌みや説教がましい言葉を発してしまうことがある。


他にも、たまたま虫の居所の悪い上席者が、部下に対して不必要に嫌みや説教がましい言葉を発することもある。中には、家庭トラブルを抱えたリーダーが、部下に対して “マイナスの発言” を行うなども考えられる。


「部下を快く思わない」「虫の居所が悪い」「家庭トラブルがある」などの状況は、いずれもリーダーの心に “ストレス” という負荷が掛かっている状態である。従って、リーダーが部下に不必要な嫌みなどを発してしまう理由は、リーダー自身の心の “ストレス” を軽減するために行われる行為といえる。つまり、自身のストレス発散のために行われるのが、部下に対して不必要な嫌みなどを発する行為の正体である。


不必要な嫌みは “反発心” を生み、“前向きな行動” を阻害する

落ち度がないにもかかわらず、「まだ、半分しかできていないのか」などの “マイナスの発言” を浴びせられた部下は、どのような心理状態に陥るだろうか。


このような時、一般的に部下の心の中に芽生えるのは、上司に対する “反発心” である。「作業が遅れているわけでもないのに、何て嫌みな課長だ」などと考える部下が多いであろう。


そのため、部下が「よし、急いで資料を仕上げるぞ!」などと考えて仕事に取り組むことはあまりない。つまり、不必要な嫌みや説教がましい言葉は、部下の “前向きな行動” を阻害する傾向が強いといえる。


中には、場を和ませる目的で、上記のような発言を使うリーダーがいるかもしれない。確かに、そのようなミュニケーション手法がないわけではないのだが、明確な上下関係が存在する企業内で使用した場合には、場を和ませるという目的を達成できないことが少なくない。


“マイナスの発言” を『ねぎらい・共感の発言』に

それでは、不必要な嫌みや説教がましい言葉で部下の “前向きな行動” を阻害しないためには、どうすればよいだろうか。


一つの方法は、「思い付いた言葉をすぐ口にしないこと」である。前述のケースでは、思い付いた「まだ、半分しかできていないのか。今週中には仕上がりそうか」という発言をすぐに口にするのではなく、今一度、自身の心の中で、発言の目的と不必要な嫌みなどの有無を確認するとよい。


その結果、自身の発言の目的が部下への資料作成の進捗確認だと分かり、「まだ、半分しかできていないのか」という発言が不必要な “マイナスの発言” だと気付けば、「今週中には仕上がりそうか」と尋ねるだけで十分だと判断できるであろう。


さらに、コミュニケーションレベルを一段高めるためには、思いついた “マイナスの発言” を『ねぎらい・共感の発言』に変換してから口にするとよい。


例えば、「まだ、半分しかできていないのか」を「忙しいのに悪いね」などの部下に対する『ねぎらい・共感の発言』に変え、「忙しいのに悪いね。今週中には仕上がりそうか」などと口にするのである。上司からこのように声を掛けられた部下は、仕事や職場に非常に “前向きな気持ち” を持ち、組織活動にとって “好ましい行動” をとることができるであろう。