環境変化に直面すると分かる「リーダーの思考様式」の違いとは

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


企業が大きな環境変化に直面したとき、組織を率いるリーダーの思考様式の特徴が明確になるようである。思考様式によっては、環境変化に円滑に対応して企業成長を促すケースもあれば、変化に対応できず成長の足かせとなるケースも存在する。今回は、環境変化への対応を求められた際に現れるリーダーの思考パターンについて考えてみよう。



変化に直面して現れる2つの思考パターン

現在、企業は働き方改革の実行や新型コロナウイルス感染症への対応など、大きな環境変化の時代に直面している。長時間労働の是正、コロナ禍で下落した売上の回復など、実現を求められる課題が山積している状態にある。


例えば、労働時間については、時間外労働の上限規制を遵守することが必要とされている。従業員の残業を月45時間、年360時間に抑制した上で従前の業務を遂行するのはもとより、これまで以上の業務成績を実現することさえ求められる。


このような厳しい環境変化に直面したとき、組織を率いるリーダーは2つの異なる思考様式を持つ人材に分かれる傾向にあると言う。『できない理由ばかりを探すリーダー』と『できる方法を考えるリーダー』である。


“できない理由” と “できる方法” のどちらに着眼するか

例えば、時間外労働の上限規制に対応するため、残業時間の大幅削減をトップマネジメントが各部門リーダーに要求するケースを考えてみよう。


このような場合に部門リーダーから出されがちなのが、「残業を減らせば、従前の営業成績を維持できない」「残業代が減るので、従業員から不満が出る」など、残業時間の削減を批判する意見や否定的な見解である。


このような意見・見解を述べるリーダーには、自身が求められている変化に対して「なぜ不可能か」という “できない理由” を懸命に探し出そうとする特徴がある。迫り来る環境変化にあらがい、現状を維持しようとする『できない理由ばかりを探すリーダー』である。


一方、「業務プロセスを見直せば、残業時間を減らせるかもしれない」「残業を事前申請制に変えれば、無駄な残業が削減できるかもしれない」などと考える部門リーダーも存在するであろう。


こちらのリーダーには、自身が求められている変化に対して「どうすれば可能か」という “できる方法” を考え出そうとする特徴がある。環境変化を所与の条件と捉え、前向きに現状変更を試みる『できる方法を考えるリーダー』と言える。


環境変化に対応できる「課題解決志向」の強いリーダー

「なぜか」と考える思考様式を問題発見志向と、「どうするか」と考える思考様式を課題解決志向と言うことがある。


一般的に、『できる方法を考えるリーダー』は、物事を前向きに捉える資質が高い。その結果、困難な課題に直面しても「何か解決方法があるのではないか」と諦めずに思考を巡らすことができるなど、強い課題解決志向を持つことが多い。


課題解決志向の強いリーダーは環境変化に強く、ピンチをチャンスに変えることが得手である。また、このようなリーダーの下では部下の課題解決志向も醸成されやすく、職場環境や組織風土に好影響を与える傾向が強い。


一方、『できない理由ばかりを探すリーダー』は、現状は変わるわけがないという固定観念や現状を変えたくないという思いが強い。結果として、“できない理由” を必要以上に並べ立てるなど問題発見志向に傾注し過ぎ、課題解決志向が疎かになりがちである。


そのため、このようなリーダーは環境変化に弱いのはもちろん、一緒に勤務する部下のモチベーションを低下させがちであり、職場環境や組織風土に悪影響を与えやすい。結果として、企業業績にマイナスの影響を及ぼし、健全な企業経営の足かせとなりがちな人材と言えよう。


「挑戦できるリーダー」はいつの世にも求められる

「薩摩の教え・男の順序」という考え方をご存じだろうか。これは、薩摩藩(現在の鹿児島県及び宮崎県の一部)の藩主であった島津義弘の言葉で、島津家に代々伝わる人材評価の順序に関する教えである。この教えでは、人材の特徴を評価の高い順に6種類に分類しており、次のとおりである。


  1. 何かに挑戦し、成功した者

  2. 何かに挑戦し、失敗した者

  3. 自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手助けをした者

  4. 何もしなかった者

  5. 何もせず、批判だけする者

  6. 何もせずに批判するだけでなく、足を引っ張る者


1が最も高評価の人材であり、6が最も低評価の人材である。実は、この人材評価の考え方は、現代の企業におけるリーダーの評価にも通じるものがある。


評価の高いとされる「1.何かに挑戦し、成功した者」「2.何かに挑戦し、失敗した者」は、換言すれば前向きに新しい行動がとれる人材である。課題解決志向の強い『できる方法を考えるリーダー』は、この条件に合致するであろう。


反対に、評価が低いとされる「5. 何もせず、批判だけする者」「6. 何もせずに批判するだけでなく、足を引っ張る者」は、新しい行動を起こせず、批判が先行する人材である。問題発見志向に傾注し過ぎ、課題解決志向が疎かになりがちな『できない理由ばかりを探すリーダー』が該当すると言えよう。


いつの世も、『できる方法を考えるリーダー』は組織を成功に導ける高評価人材であり、『できない理由ばかりを探すリーダー』は評価すべきでない人材と言えるのかもしれない。時代が変わっても、人材評価の勘所は変わらないようである。