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リーダーに求められる「挨拶の仕方」

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


職場では気持ち良く挨拶をすることが欠かせない。しかしながら、リーダーが部下に対して挨拶をするように指導しても、職場に挨拶が根付かないケースは少なくない。「ウチの社員は挨拶もまともにできない!」との声をリーダーから聞くこともしばしばである。なぜ、このような事態が起こるのだろうか。



挨拶をやめてしまう若手社員

ひとつ事例を紹介しよう。新入社員のA君は入社直後の新入社員向けマナー研修で、本社の人事担当者から「職場では気持ち良く挨拶をするように」という指導を受けた。本社での研修を終えて配属先の支店に出勤したA君は、研修で習ったとおり、キチンと気持ち良い挨拶を実行した。


ところが、A君が配属された支店では、上司も先輩社員も研修で教わったような挨拶などしていなかった。A君が大きな声で「おはようございます!」「お先に失礼します!」などと挨拶をしても、挨拶が返ってこないこともしばしばである。そのため、いつの間にかA君も研修で習ったような挨拶をやめてしまった。


これは「挨拶をしていた部下」が、時間の経過とともに挨拶をしなくなった事例である。


指導しなくても挨拶をする社員もいる

次のような事例もある。新入社員のB君が入社した会社では研修制度が整備されておらず、新入社員に対するマナー研修も実施していなかった。社会人のマナーなど何も教わっていないB君は、配属先でどうすればよいのか分からず、困惑していた。当然、挨拶などまともにできるわけがなく、職場で黙りこくっている状態であった。


ところが、B君が配属された部署では、皆がとても気持ち良く「おはようございます!」「お先に失礼します!」などと挨拶を交わしていた。社会人のマナーなど何も教わっていないB君であったが、職場の上司や先輩が皆、気持ち良く挨拶しているのを見て、「なるほど。このようにすればよいのか」と思い、少しずつ気持ち良い挨拶ができるようになっていった。


このケースは先ほどの事例と異なり、「挨拶をしていなかった部下」が、時間の経過とともに挨拶をするようになった事例である。


部下は “上司のマネ” をする

同じ新入社員であるにもかかわらず、なぜ、このような違いが発生するのだろうか。それは、部下には “上司のマネ” をするという特性が備わっているからである。


部下は “上司のマネ” をするものなので、「上司が挨拶をする職場」では時間の経過とともに、部下も挨拶をするようになる。反対に、「上司が挨拶をしない職場」では時間の経過とともに、挨拶をしていた部下も挨拶をやめてしまうわけである。


部下の挨拶が不十分な場合、得てしてその部下を問題視する傾向にある。しかしながら、部下が挨拶をするようになるかのカギを握っているのは、実は挨拶をするように命じられた部下本人ではない。挨拶をするように命じたリーダーこそが、大きなカギを握っているのである。つまり、部下が挨拶をするようになるのも、挨拶をしなくなるのも上席者であるリーダー次第ということである。


リーダーの挨拶が部下の行動を変える

挨拶は環境に大きな影響を与えるという特徴がある。そのため、気持ち良い挨拶が交わされている職場では、明るく雰囲気の良い職場環境が構築できる傾向にある。


そのような職場で就業するメンバーは、“前向き” “協力的” “建設的” な思考特性を持ちやすい。組織内に “前向き” “協力的” “建設的” な考え方を持つメンバーが増えれば、組織構成員としての『好ましい行動』が増加し、その結果として組織パフォーマンスの向上が期待できることになる。つまり、挨拶は「企業風土の良化」「組織パフォーマンスの向上」の原動力となる重要なコミュニケーション手段なのである。


もしも、リーダーの皆さんが「ウチの社員は挨拶もまともにできない!」と感じることがあれば、部下を責める前にぜひとも、「リーダーである自分はキチンと挨拶をしているのか」という点を振り返ってほしい。部下に挨拶が根付き、好ましい企業風土が構築できるかどうかは、リーダーであるあなた自身の挨拶にかかっている。

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