訪問客の迎え方

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


自社を訪れた顧客を迎える際にどのようなコミュニケーションを取るか次第で、訪問客が自社に抱く印象はいとも簡単に変わってしまうという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。



訪問客に無頓着な社員

あなたが他社を訪問したときの情景を思い浮かべてほしい。次のような企業に出会ったことはないだろうか。

  • あなたが訪問先で「すみません」と声を発しても、訪問先の社員は誰も反応しない。

  • あなたと目が合った訪問先の社員が、あなたから目をそらす。

  • あなたを遠巻きにじろじろ見る訪問先の社員がいるが、対応はしてもらえない。


これらは決して特殊な事例ではない。「訪問客の対応方法がルール化されていない企業」「訪問客の対応について、“担当者が対応する” とだけ決めている企業」などで、よく見られる光景である。皆さんも、一度や二度は経験があるのではないだろうか。


それでは、訪問客にこのような対応をした場合、顧客はその企業にどのような印象を持つものだろうか。もちろん、“プラスの印象” を持つことはないであろう。一般的には、「感じの悪い企業」「社員教育ができていない企業」など、“マイナスの印象” を持つことが多いようである。


印象の悪さはビジネス上の損失に繋がる

企業に対する印象が、顧客の “意思決定” に影響を与えることがある。つまり、その企業に対して “プラスの印象” を持てば “プラスの意思決定” を導きやすくなり、“マイナスの印象” を持てば “マイナスの意思決定” に至りやすくなるものである。


そのため、「感じの悪い企業」という “マイナスの印象” を持たれた場合には、契約条件の交渉が不成立に終わるなどの事態に陥ることもあるという。印象の悪さが顧客の “マイナスの意思決定” を誘発し、ビジネス上の損失を被ってしまうわけである。


なぜ、このような現象が起こるのかというと、「人間は “理屈” ではなく、“感情” で動く」という特性があるからである。そのため、「感じの悪い企業」などの “マイナスの印象” を持った顧客は、どうしてもその企業との交渉を成立させなければならない特別な事情でもない限りは、そのような意思決定は下しにくいのである。交渉を成立させたほうが売上は増えるなどと “頭” では分かっていても、“心” がどうしても納得しないからである。


それでは、訪問客に “プラスの印象” を与えるには、どうしたらよいのだろうか。


“好ましい挨拶” が “プラスの印象” を生む

“挨拶” には “印象” を変える力があるといわれる。そのため、“好ましい挨拶” が交わされる職場では皆が相互に “プラスの印象” を持ちやすく、その結果、“好ましい環境” が構築される傾向にある。


反対に、“不十分な挨拶” しか交わされない職場では “プラスの印象” が生まれづらく、結果的に “好ましい環境” は作られづらいようである。この点が、組織開発の分野で「“好ましい職場環境” を作りたければ、まずは “好ましい挨拶” から始めよ」といわれる所以である。


この仕組みは社外の方との間でも変わらない。従って、社外の方に対しても “好ましい挨拶” が行われていれば “プラスの印象” を与える結果となり、ひいては社外の方との間で構築される “ビジネス環境” も好ましい形になりやすくなるわけである。


ただし、単に挨拶の声を発するだけでは、“印象” を変えるような “好ましい挨拶” にはならない。“プラスの印象” を与える “好ましい挨拶” には、次の5つのポイントがある。

  1. 声の大きさ:相手が聞き取れる声の大きさで挨拶をする。

  2. アイコンタクト:相手の目を見て挨拶をする。

  3. スマイル:笑顔で挨拶をする。

  4. フレーズ:言葉を省略しないで挨拶をする。

  5. タイミング:相手よりも先に挨拶をする。


訪問客への挨拶がこの5つの条件を満たしたとき、初めて “プラスの印象” が醸成され、社外の方との間に “好ましいビジネス環境” の構築が期待できるわけである。他社に一歩足を踏み入れた途端に、大きな声で目を見て笑顔で「いらっしゃいませ!」と言われる情景を想像してみてほしい。前述の「すみません」と声を発しても、社員が誰も反応しない企業とはまるで比較にならない “好印象” を訪問先に対して抱くはずである。


リーダーの行動が「訪問客へのコミュニケーション」のカギを握る

訪問客を “好ましい挨拶” で出迎えられるかは、企業への印象を大きく左右する。万一、その時点でコミュニケーションミスが発生すると、契約交渉の不成立などの原因にさえなることがあるものである。


ところが、訪問客へ “好ましい挨拶” を行うなどの取り組みは、単に部下に命じただけでは実現が困難である。10月12日付コラム『リーダーに求められる挨拶の仕方』で説明をしたとおり、職場に挨拶が根付くかのカギを握るのは、挨拶をするように命じられた部下ではなく、挨拶をするように命じたリーダーのほうだからである。


「訪問客への挨拶」というコミュニケーションを好ましい形に変えようと思うのであれば、リーダーであるあなたの挨拶を振り返ることが必要不可欠である。

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