サッカー元日本代表・長谷部選手に見る、社会人に必要な「読書の習慣」

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


数多くの名著に親しむ、プロサッカー選手の長谷部誠さん。どのような業界で働いていても、高業績の実現に「読書」は必須の習慣であるという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。



読書家のプロサッカー選手

皆さんは、長谷部誠さんというプロサッカー選手をご存じだろうか。日本代表のキャプテンも務めたことがある優秀なプレーヤーである。


実は、彼は知る人ぞ知る「読書家」である。「読書は自分の考えを進化させる」との考えを持っており、ビジネス書から哲学書まで数多くの名著に親しんでいる。飛行機内に持ち込むキャリーケースの中身の半分が書籍で占められることもあるそうだ。さまざまな分野の書籍から数多くのことを学び、それが彼のパフォーマンスの向上につながっているようである。


どのような業界であれ、素晴らしい業績をあげる人には「読書家」が多い。本からは学ぶことが実に多く、学んだことが仕事に、生活に、人生に活かせるからである。自分が生活の中で体験できることは、きわめて限定的である。ところが、本を読むことにより、日々の生活を送っているだけでは経験できない、さまざまな知見を得ることが可能になる。わずかな時間で著者の知見に接することができる「読書」という行為には、自分自身を向上させる大きな力が秘められている。


「本を読む時間などない」は本当?

「読書」にはこのような効能があるため、社会人にとっては「読書の習慣」が必須である。しかしながら、「読書」が社会人にとって欠かせない「習慣」であるという認識を持たない方が多いのも事実である。


社会人にとっての「読書」は、学生時代のそれとは大きく趣を異にする。学生時代の「読書」といえば、趣味の色合いが強い。しかし、社会人にとっての読書は趣味ではなく、「仕事の準備」のための時間ともいえる。「良い仕事」をしようと思えば「良い準備」が必須である。したがって、勤務時間外にいかにこの「仕事の準備」のための時間を取れるかが、社会人には重要となる。


企業・組織では人事部門がイニシアチブをとり、社員に社会人としての「好ましい考え方、習慣」を身につけさせる取り組みが必要である。そのひとつが「本を読む習慣」といえる。しかしながら、読書をしたくても日々の仕事に追われ、「時間が取れない」という悩みを聞くことがある。


本当にそうであろうか。自分自身の一日の行動をよく振り返ると、ダラダラとテレビを見ている時間、目的を持たずにインターネットをやっている時間などが思いのほか多いことに気づくはずである。その時間を一日30分でも本を読む時間に充てたとしたら、読みやすいビジネス書であれば1ヵ月で2~3冊は読めてしまう時間が手に入る。本を読む時間がまったく取れない状況など、およそあり得ない。


月に1冊はビジネス書を読む習慣を

それでは、どうすれば部下・後輩社員に「読書の習慣」を身につけさせられるのだろうか。部下に「読書の習慣」を身につけさせるためには、上司や先輩社員自身が「読書の習慣」を持つことが必要である。部下の育成には職場環境の与える影響が非常に大きい。自分の上司・先輩社員が、当たり前のように「読書」をしている環境に置かれれば、部下にとっても「読書」が当たり前になるものだ。


社員に自己啓発を奨励する企業は多く、人事部門の企画により通信教育や資格取得に対する金銭的援助を行うなどの取り組みが行われている。しかしながら、ぜひ、重要な自己啓発の手法として、社員への「読書の習慣づけ」も推進してほしいものだ。新入社員であれば月に1冊、中堅以上の社員であれば週に1冊はビジネス書などを読破したい。


通勤途中の社会人の行動を見るとスポーツ新聞を読んでいたり、スマホのアプリで暇つぶしをしていたりする方を数多く見かける。もしも、部下・後輩社員に社会人としての好ましい習慣を身につけさせたければ、まずは、このような自分自身の習慣を振り返る必要があるかもしれない。勤務時間外の行動も、部下の育成に大きな影響を与えることを、知ってほしいものである。

© 2007 ConsultingHouse PLYO