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【令和7年法改正特集⑥】子や配偶者の加算・加給の見直し、脱退一時金制度の見直し

2025年10月5日
読了時間: 9分

更新日:7 日前

大須賀信敬(特定社会保険労務士)


令和7年6月、5年に1度の年金改正の内容が決定した。果たして、日本の年金はこれからどのように変わるのか。6回目の今回は、その他の各種改正点の中から「子や配偶者の加算・加給の見直し」と「脱退一時金制度の見直し」について見ていこう。



目 次


■ 手厚くなる「子の加算」

令和7年6月13日に成立した「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」では、以下の項目の実施が法定されている。

  1. 被用者保険の適用拡大

  2. 在職老齢年金制度の見直し

  3. 遺族年金の見直し

  4. 標準報酬月額の上限の段階的引上げ

  5. 私的年金の見直し

  6. その他の各種改正


今回は、最後の項目である『その他の各種改正』について解説をする。今まで解説した以外のおもな改正点は、次のとおりです。

(1)子や配偶者の加算・加給の見直し

(2)脱退一時金制度の見直し

(3)障害年金・遺族年金の直近1年要件の再延長

(4)国民年金の納付猶予制度の再延長

(5)国民年金の高齢任意加入の対象拡大

(6)離婚時分割の請求期限の長期化


上記のうち本コラムでは、(1)「子や配偶者の加算・加給の見直し」と(2)「脱退一時金制度の見直し」を取り上げることにする。


はじめは、「子や配偶者の加算・加給の見直し」である。今回の改正により「子の加算」は増額になり、「配偶者の加給」は減額になる。


「子の加算」が増額される件については、2025年法改正特集④で遺族年金に加算されるケースについて説明をしている。実は、その仕組みは老齢年金や障害年金への加算でも適用されることになっており、具体的には次のとおりである。

① 3人目以降の子供の加算額を1・2人目と同額にする。

② 子供1人当りの加算額を増額する。

③「子の加算のない年金」にも加算を付ける。


これは、年金をもらいながら子育てをする人への支援を強化する目的で設けられる施策である。それでは、①の「3人目以降の子供の加算額を1・2人目と同額にする」から見ていこう。


現在、「子の加算」が行われる年金には、次のようなものがある。

  • 老齢厚生年金

  • 障害基礎年金

  • 遺族基礎年金


いずれの年金に付く加算も考え方は同じで、1人目と2人目の子は1人当たり「224,700円に改定率を乗じて得た額」、3人目以降の子は「74,900円に改定率を乗じて得た額」が上乗せされる。3人目以降の子は、1・2人目の子の3分の1の金額に減ってしまう。


現在の年金制度の子に関する加算は、国家公務員に支給する扶養手当の仕組みを参考に作られた。年金制度の整備が行われた当時、国家公務員の扶養手当は第3子以降の金額を減額する仕組みだったため、年金でも同様の仕組みが採用されたわけである。


ところが、現在、国家公務員の扶養手当については法改正が行われ、第3子以降も第1子や第2子と同額の手当に変更されている。そこで、年金制度でも同様の取り扱いにすることが決定したものである。


そのため、遺族年金に上乗せされる加算だけでなく、老齢年金や障害年金に上乗せされる「子の加算」も3人目以降の子が1・2人目と同額になる。


次に②の「子供1人当たりの加算額を増額する」である。これは、老齢年金・障害年金・遺族年金に上乗せされる「子の加算」を、すべての子供について1人当たり「269,600円に改定率を乗じて得た額」に変更するという法改正である。


現在、1人目と2人目の子供の加算は「224,700円に改定率を乗じて得た額」なので、加算の基準となる金額が2割増額される。3人目以降の子供については、前述①の施策と合わせると3.6倍の金額に変わる。


①や②の施策は、すでに「子の加算」が上乗せされた年金を受け取っている人も、もちろん増額の対象とされる。


図表01


最後は③の「「子の加算のない年金」にも加算を付ける」という改正である。前述のとおり、現在の制度で「子の加算」が付くのは、老齢厚生年金・障害基礎年金・遺族基礎年金である。次の3つの年金には、「子の加算」が行われていない。

  • 老齢基礎年金

  • 障害厚生年金

  • 遺族厚生年金


しかしながら、これら3つの年金にも「子の加算」を付けることが決定している。その結果、老齢・障害・遺族のいずれの年金についても、国民年金側と厚生年金側の両方に「子の加算」が付くことになる。


そのため、たとえば「老齢基礎年金はもらえるが、老齢厚生年金はもらえない」など、今までであれば「子の加算」のない年金しか受け取れないケースであっても、加算が上乗せされた年金をもらえるように変わるわけである。


かりに、2つの年金に「子の加算」が付くようなケースでは、原則として厚生年金側の加算のみが行われ、国民年金側の加算は支払いが停止されることになっている。


図表02


■「配偶者の加給」は減額に

次は、「配偶者の加給」の減額について見ていこう。現在、配偶者加給年金が付く年金は、次のとおりである。

  • 老齢厚生年金

  • 障害厚生年金


このうち老齢厚生年金には、配偶者加給年金として「224,700円に改定率を乗じて得た額」が特別加算と合わせて上乗せされている。


しかしながら、今回の法改正では「202,200円に改定率を乗じて得た額」が特別加算と合わせて上乗せされることになった。つまり、加給の基準となる金額が224,700円から202,200円へと、1割減額されることになるわけである。


図表03


老齢厚生年金に上乗せされる現在の配偶者加給年金は、女性の社会進出が現在ほど活発ではなかった制度整備当時、妻に年金収入が発生するまでの間の経済的負担を軽減するなどの目的で付けられたものである。そのため、妻が年金の受け取り開始年齢である65歳になると、配偶者加給年金は役割を終えて上乗せが終了する。


ところで、最近では女性の社会進出が進んだため、夫のいる65歳前の女性が働いて収入を得ているケースも多いようである。しかしながら、夫の老齢厚生年金に上乗せされる配偶者加給年金は、妻の年収が850万円未満である限り支払われ続ける。


結果的に、「妻にかなりの収入があるにもかかわらず、夫の年金に経済的負担を軽減するための加給が付き続ける」という矛盾が発生してしまう。このような事情を踏まえ、今回の減額が決定されたようである。


ただし、すでに配偶者加給年金付きの老齢厚生年金を受け取っている人は、減額されることがない。減額対象になるのは、今後、新規に配偶者加給年金の付いた老齢厚生年金を受け取る場合に限られている。なお、障害厚生年金に付く配偶者加給年金は、減額の対象とはされていない。


「子や配偶者の加算・加給の見直し」に関する施策の施行は、令和10年4月1日である。


■ 脱退一時金の受け取りによる不利益が解消

次は「脱退一時金制度の見直し」である。脱退一時金は外国籍者の納めた保険料が掛け捨てにならないようにする目的で、今から30年ほど前の平成7年度から始められた制度である。


来日して日本で働く外国籍者は、通常、滞在期間があまり長くない。ただし、日本で働いている間は、日本の年金制度に加入することが法律上の義務とされている。その結果、老齢年金をもらうのに必要な加入実績を残せないまま母国に帰るという事態に陥ってしまいがちである。いわゆる「保険料の掛け捨て状態」になってしまうわけである。


このような状況に対応するため、納められた保険料の一部に相当する金額を本人に戻すようにしたのが脱退一時金である。具体的には外国籍者が日本を離れた後、年金に加入していた期間の長さに応じた金額が支払われる。制度創設当初は、最大で3年間の保険料納付に応じた一時金をもらえる仕組みだった。


その後、一部の在留資格で日本に滞在できる上限年数が引き上げられたことなどを踏まえ、脱退一時金も令和3年度から最大で5年間の保険料納付に応じた一時金がもらえるように変更されている。脱退一時金を受け取ると、支払い対象になった年金の加入期間は「年金に加入していなかった期間」として取り扱われる。


今回の改正では、脱退一時金について次の2点が決定している。

① 再入国許可付きで出国した場合には、許可の有効期間内は脱退一時金を支給しない。

② 支給上限を現行の5年から8年に引き上げる。


はじめに、①の「再入国許可付きで出国した場合には、許可の有効期間内は脱退一時金を支給しない」から見ていこう。日本に働きに来た外国籍者の中には、途中で一旦、母国に帰る人もいるようである。このような人の場合には、日本を出国するに当たり「再入国の許可」をあらかじめ取得しておくことが認められている。


この許可を得ていると、再度、日本に入国する際に手続きが簡略化されるためである。在留資格も続けて利用できるため、日本に戻る予定のある外国籍者にとってはとても便利な制度だ。ただし、外国籍者が母国に一時帰国をしている最中に脱退一時金をもらってしまうと、困った事態が発生することがある。


具体例で考えてみよう。たとえば、日本で通算10年間働いたベトナム人のAさんがいるとする。Aさんは日本で働いている最中は、もちろん日本の年金制度に加入して毎月、保険料を納めた。


それでは、Aさんが途中で一時帰国した場合を考えてみよう。もしも、Aさんが日本に滞在して4年経ったとき、再入国許可を得てベトナムに帰国し、その際に脱退一時金を受け取っていたらどうなるだろうか。


Aさんは日本の老齢年金を受け取ることができなくなる。4年経過後に帰国して脱退一時金をもらったのだから、その4年間は日本年金機構のコンピューター内では「年金に加入していなかった期間」とされているからだ。


その結果、Aさんの加入実績はまだ6年間しかないことになり、年金を受け取るのに必要な最低加入年数を満たしていないとされる。


図表04


1回の支払いで終わってしまう脱退一時金よりも、生涯支払われ続ける老齢年金のほうが総受け取り額が多いのが通常である。つまり、Aさんは脱退一時金をもらったために、年金という “より大きな経済的利益” をみすみす手放すことになってしまうわけだ。


このような状況を回避する目的で、日本に再入国する許可を得て出国した外国籍者については、許可の有効期間が切れるまでは脱退一時金を受け取れないようにすることが決まった。この制度変更により、外国籍者が不利益を被るのを未然に防ぐことができるものである。


この施策の施行は、法律の公布日である令和7年6月20日から4年以内の政令で定める日とされている。


■ 最高額は「8年分の保険料に応じた額」に引き上げへ

次に、②の「支給上限を現行の5年から8年に引き上げる」である。現在、わが国では、一定の技能を習得した外国籍者を育成・確保する目的で、育成就労という新しい在留資格を設けることが決まっている。


この新しい資格で日本に滞在できる期間は、最大で3年間である。また、育成就労の期間の終了後は、特定技能1号という別の在留資格に移行し最大でさらに5年間、日本に滞在することが可能である。その結果、育成就労の在留資格が設けられると、合計で8年間日本に滞在する外国籍者が増加すると予想される。


ところで、現在の脱退一時金制度では、支払われるのは最大で「5年間の保険料納付に応じた額」と決められている。かりに、8年間保険料を納めても、「5年間の保険料納付に応じた額」しかもらえないわけである。


そこで、脱退一時金の支給の上限も、最大で「8年間の保険料納付に応じた額」に引き上げることが決定された。本施策について具体的には、政令で措置予定とされている。


今回のまとめ

  1. 「子の加算」は2割増額、第3子以降も同額とし、現在は加算がない年金にも加算を行う。

  2. 老齢厚生年金の「配偶者の加給」は、1割減額する。

  3. 再入国許可付きで出国した外国籍者には、一定期間は脱退一時金を支給しない。

  4. 脱退一時金の支給上限は、8年に引き上げる。


【参 考】



Lectures by the Labor and Social Security Attorneys

 
 

© 2007 ConsultingHouse PLYO

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