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年金の受け取り口座の電子申請での変更

7月5日
読了時間: 13分

大須賀信敬(特定社会保険労務士)


現在、年金受給者が行う手続きの中には、スマホを使って電子申請でできるものが少なくない。年金を受け取る金融機関の口座を変更する手続きも、スマホで完結することが可能である。そこで今回は、年金の受け取り口座の変更手続きを電子申請で行う方法を整理してみよう。



目 次


令和7年1月から始まった振込先変更の電子申請

年金受給者が行う手続きが初めて電子申請可能になったのは、今から3年ほど前の令和5年9月のこと。『公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の提出がスマートフォンでできるように変更された。


その後、電子申請可能な手続きの範囲は徐々に拡大され、直近では昨年(令和7年)3月から「配偶者や18歳未満の子供がいる人が老齢年金を受け取るための手続き」が電子申請でできるように変更されている。


年金受給者が電子申請で行える手続きの変遷は、次のとおりである。


図表01


上図にあるように年金の受け取り口座の変更手続きは、昨年(令和7年)1月から電子申請でできるように仕組みが整備されている。ただし、スマホで電子申請を行うにはマイナンバーカードが取得済みであり、加えてマイナポータルとねんきんネットを連携していなければならない。


マイナポータルとねんきんネットの連携とは、両サービス間で情報をやり取りできるように登録することをいう。したがって、スマホで年金の振込先を変えるには、まずはこれらの準備を事前に整える必要がある。


スマホでの変更はこうやって進める

それでは、年金受給者が電子申請で振込先を変える具体的な手順を見ていこう。マイナンバーカードは取得済みであるとする。


初めに、事前準備の流れは次のとおりである。


1.事前準備


① マイナポータルの利用者登録

最初にマイナポータルの利用者登録を行う。マイナポータルのトップ画面からログインし、「数字4桁のパスワードの入力」「マイナンバーカードの読み取り」を行う。


図表02

  

























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


「利用者登録へ進む」を押した後は、画面の案内のとおりに入力や選択をしていく。


② マイナポータルとねんきんネットの連携手続き

マイナポータルの利用者登録が終わったら、マイナポータルとねんきんネットの連携を行う。マイナポータルトップ画面を「おかね」までスクロールし、「年金」を選ぶ。次に、「ねんきんネット連携」画面にある「ねんきんネットと連携」を押す。


図表03

   





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


連携に関する説明文を確認して「連携」を押す。これで、マイナポータルとねんきんネットが情報をやり取りできるようになる。


③ 公金受取口座の登録

次に公金受取口座の登録を行う。マイナポータルトップ画面を「おかね」までスクロールし、「公金受取口座」を選ぶ。


図表04

 




























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


「口座情報の登録状況」画面の「口座情報を登録する」を押し、画面案内のとおりに入力や選択を行う。以上で事前準備は終了である。


2.電子申請用の書類の作成

年金の振込先を変更するための申請書類の作成に入る。流れは次のとおりである。


① 手続き用画面への移動

マイナポータルのトップ画面を「おかね」までスクロールし、「年金」を選ぶ。次に、「老齢年金の受給」欄にある「老齢年金の受け取り開始」を選ぶ。


図表05





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


画面がねんきんネットの「電子申請用の手続き書類を選択する画面」に切り替わるので、「年金受取機関変更届」欄の「届書を作成する」を選ぶ。


図表06





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


画面がねんきんネットにある「手続き書類の作成画面」に切り替わる。


② 注意事項の確認

画面に口座の変更に関する注意事項が表示される。


図表07






























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


確認をして問題がなければ「次へ」を押す。


③ 事前確認事項への回答

画面に「年金生活者支援給付金を受け取っていますか?」などの事前確認事項が表示される。


図表08

 




























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


すべてに回答を終えたら「次へ」を押す。もしも、回答の途中でメッセージが表示された場合には、そのメッセージに従う。


④ 基本情報の入力

画面に自分の基礎年金番号や氏名、生年月日、住所などの情報が表示される。間違っていないかを確認し、電話番号を入力する。


図表09

 




























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


⑤ 振込先を変更する年金の選択

基本情報を入力後に画面を下にスクロールすると、振込先の変更を希望する年金を確認する画面が表示される。


図表10





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


この画面は②事前確認事項の「年金生活者支援給付金を受け取っていますか?」の回答内容により、表示内容が異なる。この画面で「複数の年金を受け取っている場合にどの年金の振込先を変えるか」「年金生活者支援給付金の振込先も変えるか」などを指定する。


複数の年金の中の一部だけを変える場合には、年金コードと呼ばれる4桁の数字(年金の種類を表す数字)も入力をする。最後に画面下の「次へ」を押す。


⑥ 口座情報の入力

新しい振込先の情報を入力する。


図表11

  
























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


指定できる振込先は公金受取口座だけである。終わったら「次へ」を押す。


⑦ 申請内容の確認

画面にこれまで入力した内容が表示される。


図表12





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


入力内容に誤りがないかを確認し、大丈夫であれば「電子署名を付与して申請する」を押す。


⑧ 電子署名の付与

「電子署名を付与する」を押す。


図表13

 





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


画面の案内に従って署名用電子証明書パスワード(英数字6~16桁)を入力する。スマートフォンの裏面にマイナンバーカードをかざして読み取る。「受取金融機関(口座)を変更する(申請完了)」の画面が表示されたら終了である。


図表14





























出典:日本年金機構ウェブサイト「動画:受取機関変更届の電子申請手順」

  (本文で言及した箇所に赤枠を付している。)


以上のような段取りを経て電子申請をした後は、マイナポータルの「やること」画面で申請の状況が確認できる。この画面に『年金受取機関変更届』という項目が表示されている場合、手続きが受け付けられたことを示している。申請状況は処理が進行中の場合には「処理中」、申請に不備があった場合には「要再申請」、処理がすべて終了した場合には「完了」と表示される。


振込先変更に伴う注意点

スマホで年金の振込先を変更する手続きには、注意しなければならない点がある。たとえば、次のような点に気を付けることが必要である。


(1)公金受取口座の登録直後は手続きができない

公金受取口座を初めて登録したり、登録済みの公金受取口座を変更したりした場合、その直後に年金の振込先変更をスマホで行うことはできない。公金受取口座の審査や登録処理に、最長で2週間程度かかることがあるためである。


そのため、登録手続きを終えてからあまり間がない時点では、「公金受取口座の登録処理が終わるまで待つ」「紙の手続き書類で振込先を変更する」のいずれかの方法を取ることが必要になる。


(2)変更した振込先が利用できるようになるには時間がかかる

スマホでの電子申請の終了と同時に、振込先の変更が有効になるわけではない。日本年金機構での変更作業にも一定の時間を要するため、変更手続きを終えてから1カ月程度は以前の振込先に年金が入金になることがある。


そのため、電子申請を終えたからといって以前の銀行口座を解約してしまうと、「新旧いずれの口座にも年金が振り込まれない」という事態が発生することがある。万一に備え、新しい振込先に年金が入金になるまでは、以前の銀行口座の解約はしないことが大切である。


(3)公金受取口座を変更しただけでは年金の振込先は変わらない

年金の振込先をすでに公金受取口座に指定している場合、公金受取口座を変更するだけで自動的に年金の振込先も切り替わることはない。年金の振込先を変えるには、別途、日本年金機構への所定の手続きが必要になる


(4)年金担保融資を利用していると振込先は変えられない

年金を担保に融資を受けている最中の場合は、年金の振込先は変更することが認められていない。振込先を変えるには、融資を完済することが必要である。


(5)電子申請に対応していない手続きもある

以下のケースでは、スマホでの振込先の変更ができません。

① 海外の金融機関で年金を受け取りたい。

② 後見人などが手続きをする。

③「被用者年金一元化の前からもらっている共済年金」の振込先を変更したい。


①②についてはそれぞれ専用の手続きが定められている。また、③の場合は共済組合側での手続きが必要である。


国民の8割超がマイナカード所有者に

ところで、皆さんはマイナンバーカードを持っているだろうか。デジタル庁によると、マイナンバーカードの保有者数は昨年(令和7年)12月末に1億人を突破。令和8年3月末時点では、1億0,220万5,295人に達しているそうである。


保有率は82.2%に上り、国民の8割超はカードを所有している状態だ。年金の振込先の変更に当たり、マイナンバーカードの取得手続きから始めなければならないケースはそれほど多くないかもしれない。


ただし、カード所有者の全員が公金受取口座を登録しているわけではない。令和8年3月末日現在、公金受取口座の登録率はマイナンバーカード所有者の62.3%とのこと。そのため、年金の振込先を変更するために、公金受取口座の登録手続きから始めるというケースは一定程度発生するといえそうである。


スマホでの年金振込先の変更は本当に利用される?

スマホを利用した年金の振込先変更手続きは、どの程度、利用が見込めるだろうか。年金の中で圧倒的に受給者数が多い老齢年金を例に考えてみよう。


はじめに、老齢年金の受給対象である高齢層について、日常生活でのインターネットの利用状況を見ていこう。消費者庁の『令和5年版消費者白書』によると、インターネットを利用しない割合は65歳以上74歳以下が36.7%であるのに対し、75歳以上では67.0%である。


図表15


高齢層のインターネット不使用率は75歳以上になると顕著であり、3分の2の人が普段の生活でインターネットを使わないことが分かる。


さらに、インターネットを利用している人について用途を見てみると、「情報収集(検索、閲覧)」が非常に多いのに対し、「電子決済・QRコード決済」「ネットバンキング・振込」「行政手続き」などで利用するケースは極端に少なくなる。この傾向は75歳以上になると一層顕著である。


図表16


高齢層のインターネット利用は情報収集などの日常利用が中心であり、各種手続きや取引関係に利用されるケースは極めて限定的であることが分かる。現在、老齢年金の受給者は3,421.9万人だが、過半数の51.7%が75歳以上である。(年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年/厚生労働省)。


以上から、老齢年金受給世代の半数以上がインターネットを普段は利用せず、使ったとしても検索や閲覧などの日常利用に留まるケースが大半であることが分かる。


また、年金は受け取り手続きの際に指定した振込先をそのまま使い続けるケースが一般的なようだ。「転居をしたら口座を開設していた銀行が近所になくなってしまった」などのことがなければ、変更することはほとんどないだろう。


「海外に移住した」「高齢のために成年後見人を立てた」などにより振込先を変更するケースも考えられなくはないが、これらの場合に必要な手続きは電子申請ではできない。


以上を鑑みると、「スマホで年金の振込先が変更できる仕組み」は、少なくとも老齢年金を受給する高齢層に劇的なニーズがあるとは考えにくいだろう。


年金機構の内部処理は効率的に

一方、年金の振込先変更手続きを処理する日本年金機構側は、スマホで電子申請されることによって事務処理のスピード・手間・正確性が格段に向上すると見込まれる。紙の『年金受給権者 受取機関変更届』の処理は、非常に手間が掛かるためである。


多くの場合、届は手書きで提出されるために「誤字脱字がある」「判読が難しい」などのケースが少なくない。また、届に記載された口座の存在を確認できるよう、通常は預金通帳のコピーが一緒に提出される。このコピーも「不鮮明で読み取れない」「コピーが途中で切れている」「必要なページがコピーされていない」などのケースが発生するものである。


以上のような不備があると、申請をした受給者に届を返送して再提出を求めなければならない。このような作業を担当者が1件1件、処理するのだから、その労力は無視できない。


また、人手に依存した作業にはミスがつきものでる。「日本年金機構の事務処理担当者側が確認を誤る」というケースも、決して考えられなくはないだろう。


一方、スマホで電子申請された変更手続きの場合には、以上のような手間が大幅に縮小される。したがって、スマホで年金の振込先が変更できる仕組みは、年金保険者(年金制度の運営団体)側の事務処理効率化・高度化への貢献度が高い取り組みといえるだろう。効率的で誤りのないサービスを受けられることが、ひいては受給者のメリットになるといえるかもしれない。


電子申請で完了する行政手続きが増えるのは、利用者にとって非常に嬉しいことである。しかしながら、年金を受け取っている高齢層には、スマホを使った手続きはややハードルが高いだろう。実際の利用者層との間には、まだギャップがあるといえる。開始から間がないスマホによる電子申請だが、今後一層、利用者ニーズに合致した仕組みに改善されることが望まれる。


今回のまとめ

  1. 年金の振込先変更手続きは、令和7年1月からスマホでもできるようになった。

  2. 初めに、事前準備として「マイナポータルの利用者登録」などを行い、その後はマイナポータルからねんきんネットに入って画面の案内どおりに入力・選択を行う。

  3. 公金受取口座の登録や振込先の変更には時間が掛かる。また、スマホによる電子申請に対応していない変更手続きもある。

  4. マイナンバーカードの保有率は8割超で、そのうちの6割程度が公金受取口座を登録済みである。

  5. 75歳以上の3分の2はインターネットを使用せず、使っても手続き・取引を行うケースは稀である。年金の振込先変更は頻度も少なく、スマホによる変更手続きのニーズは大きいとは言い難い。

  6. スマホによる電子申請は、日本年金機構の事務処理能力の向上に寄与する仕組みといえる。


【参 考】



Lectures by the Labor and Social Security Attorneys

 
 

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