年金の源泉徴収票の見方と令和7年分の確定申告
更新日:7 日前
大須賀信敬(特定社会保険労務士)
確定申告の時期が近づくと、日本年金機構から届く源泉徴収票。年金から天引きされた所得税額のお知らせである。しかしながら、「見方がよく分からない」という人も多いだろう。そこで今回は、確定申告に関係する年金受給者が受け取る源泉徴収票の記載の仕組みを見てみよう。

目 次
■ 紙とデータの2種類ある源泉徴収票
現在、日本年金機構が送付する源泉徴収票には、ハガキタイプと電子データの2種類がある。それでは、ハガキタイプの源泉徴収票から説明しよう。
ハガキタイプの源泉徴収票は、今年(令和8年)1月8日から同15日にかけて順次、発送が行われたところである。郵送されてくる源泉徴収票を広げると、次のような書類が確認できる。
図表01

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージ
正式な名称は『令和7年分 公的年金等の源泉徴収票』である。
『公的年金等の源泉徴収票』は税金関係の書類なので、様式は国税庁が定めている。国税庁が定める源泉徴収票の様式は、企業年金を支払っている団体などでも使用されている。公的年金を支払う日本年金機構だけが使う様式ではないので “等” の字が入り、『公的年金等の源泉徴収票』というタイトルになっている。
長らく源泉徴収票は、ハガキタイプのものだけが発行されていた。しかしながら、前述のとおり現在は電子データでも受け取ることが可能である。このサービスは3年ほど前、令和5年分の源泉徴収票から始められた仕組み。
ただし、電子データの源泉徴収票を受け取るには、事前に登録をしなければならない。具体的には、マイナポータルとねんきんネットを連携し、その上で電子送付希望の登録を行うことが必要である。このような手続きを令和8年1月5日までに済ませていると、同6日から7日にかけてマイナポータルの「お知らせ」に源泉徴収票の電子データが届く。
なお、令和8年1月5日までに必要な手続きを終えていなかった場合には、マイナポータル経由でねんきんネットにログインして源泉徴収票の再交付申請を行うと、今からでも電子データでの受け取りが可能である。
■ 記載内容を見てみよう
それでは、源泉徴収票にはどのようなことが書かれているか、ハガキタイプのもので見ていこう。はじめに、ハガキの左上部分(下図の赤枠部分)から確認してみよう。
図表02

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
この部分には「支払を受ける者」という欄に「住所または居所」「氏名(フリガナ)」という欄がある。ここは日本年金機構に登録されている受給者の住所や氏名が印字されている。
通常、日本年金機構では住民票上の住所に年金関係の通知を送付する。ただし、「住民票上の住所とは別の場所に書類を送付してほしい」という希望がある場合、その場所を「居所」として登録できることがある。このような仕組みを居所登録という。
居所登録ができることにより、何らかの理由で住民票上の住所以外のところに住んでいても、年金関係の郵便物を正しく受け取ることができる。たとえば、「A町にある介護施設に入っているが、住民票はもともと住んでいたB町のまま移動していない」などの場合、居所としてA町の住所を登録でき、年金関係の郵便物はA町で受け取ることが可能になる。
それでは、ハガキの右上部分(下図の赤枠部分)を見てみよう。
図表03

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
「生年月日」と「年金の種別」という欄があります。ここで注意をしたいのは、「年金の種別」といっても障害年金や遺族年金を示す印字がされるわけではないことである。
障害年金・遺族年金は所得税がかからない非課税の年金である。そのため、これらの年金だけを受け取っている受給者にはそもそも源泉徴収票が送られることはなく、「年金の種別」欄に障害年金や遺族年金を示す印字が行われることもない。
また、年金生活者支援給付金にも所得税は課税されない。したがって、年金生活者支援給付金に関する源泉徴収票が発行されることもなく、「年金の種別」欄にこの給付金に関する印字がされることもない。
次は「生年月日」の左下部分(下図の赤枠部分)を見てみよう。
図表04

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
「区分」と「支払金額」という欄がある。「区分」には次のような4つの項目が表示されている。
|
これは支払われた老齢年金がどのような種類の年金かにより、金額を記載する欄が4種類に分かれているものだ。
国民年金や厚生年金の老後の年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)を受け取っている人の場合には、1行目の「所得税法第203条の3第1号・第4号適用分」のところに年金額が印字されている。また、64歳までの特別支給の退職共済年金を受け取っている場合にも、1行目に印字が行われる。
ちなみに、2行目以降は次のような年金の金額が印字される欄になっています。
… 65歳からの退職共済年金
… 退職年金(退職等年金給付)⇒ 公務員・私学教職員の職域部分(被用者年金制度一元化で廃止になった上乗せ年金)のかわりに、一元化以降の加入期間に対して払われているもの … 経過的職域加算額(退職共済年金)⇒ 公務員・私学教職員の職域部分(被用者年金制度一元化で廃止になった上乗せ年金)を、経過措置として受け取れるようにしたもの
… 上記以外 ⇒ 企業年金など |
「支払金額」欄には、令和7年中に支払われた年金の総額が印字される。具体的には、令和7年2月から同年12月までの間に支払われた年金の合計額が記されている。
ただし、令和8年1月に年金の支払いが行われているケースでは、その金額も含んだ額が総額とされる。
通常、年金の支払いは偶数月である。ただし、年金の支払いが決定したときなどには、奇数月であっても支払いが行われることがある。このような仕組みを随時払いという。
令和8年1月に支払われた年金は、本来であれば令和7年12月に支払われるべき分に当たる。そのため、令和7年中に支払われた年金の一部とされることになっている。
また、記載されている金額は総額なので、所得税だけでなく介護保険料や国民健康保険料などの社会保険料も差し引かれる前の金額になる。
次は「支払金額」欄の右側部分(下図の赤枠部分)を見てみよう。
図表05

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
ここには「源泉徴収税額」という欄がある。源泉徴収票の一番大事な部分が、ここに記載されている金額である。令和7年中に支払われた年金から天引きされた所得税と復興特別所得税の合計額が印字されている。
次に、ハガキの中段部分(下図の赤枠部分)を見ていくと、「本人」「源泉控除対象配偶者の有無等」「控除対象扶養親族の数」「16歳未満の扶養親族の数」「障害者の数」「非居住者である親族の数」という用語が一列に並んでいることが分かる。
図表06

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
ここは年金受給者が提出した扶養親族等申告書(正しくは『公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』)の記載内容が反映されている部分になる。それぞれの項目に該当する場合には、「★(星印)」や「人数」が印字されている。該当する親族がいなかったり、そもそも扶養親族等申告書が未提出だったりする場合には、空欄のままとされる。
ただし、注意したい点があります。ここに記載されているのは、令和7年分の扶養親族等申告書の記載内容だという点である。
令和7年分の扶養親族等申告書は、令和6年に提出するのが通常である。つまり、一昨年(令和6年)に提出した分が反映しているわけである。
ところが、多くの年金受給者にとって扶養親族等申告書といえば、つい何カ月か前に提出した令和8年分の内容が記憶に強く残っています。そのため、「この間、提出した扶養親族等申告書の内容と違う」と勘違いをしてしまいやすく、注意が必要な個所といえる。
また、「源泉控除対象配偶者の有無等」欄の記載にも気を付けたいところである。年金受給者の中には「配偶者がいるのに「源泉控除対象配偶者の有無等」欄が空欄になっていておかしい」などと、慌ててしまうことがあるからだ。
この欄は単に配偶者がいるかどうかを示している欄ではない。源泉控除対象の配偶者が存在するかどうかを示す欄になる。
そのため、かりに配偶者がいても、次の場合には「源泉控除対象配偶者の有無等」の欄は空欄とされる。
|
次に、「非居住者である親族の数」欄の右側(下図の赤枠部分)を見てみよう。ここには「社会保険料の額」欄がある。
図表07


出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
ここには年金から天引きされた社会保険料のトータル額が印字され、その下の「摘要」欄(下図の赤枠部分)にその内訳が印字される。
図表08

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
ただし、個人住民税と森林環境税については、含まれていない。
扶養親族等申告書に記載した家族の氏名は、ハガキの左下部分(下図の赤枠部分)にある「源泉控除対象配偶者、氏名(フリガナ)」「控除対象扶養親族、氏名(フリガナ)」「16歳未満の扶養親族、氏名(フリガナ)」の各欄に印字される。
図表09

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
最後に、ハガキの一番左下部分(下図の赤枠部分)を見ると「支払者」に関する記載があり、そこには「厚生労働省年金局 事業企画課長」と記されている。
図表10

出典:日本年金機構ウェブサイト掲載の拡大イメージに筆者加筆
公的年金業務は厚生労働省が所管する国の業務である。日本年金機構は厚生労働省からの委託によりその実務を担当しているに過ぎない。このような事情から源泉徴収票の「支払者」には、所管官庁である厚生労働省の名称が記載されている。
■ 今回は確定申告をしたほうがよいかも?
老齢年金受給者の確定申告については、税手続きの負担を軽減する目的で「確定申告不要制度」が用意されている。「確定申告不要制度」とは一定条件を満たした場合に所得税と復興特別所得税の確定申告をしなくてもよいとするルールで、十数年前の平成23年分の申告から採用されている仕組みである。
具体的には、年金受給者が次の2つの条件の両方を満たした場合、確定申告が不要になる。
|
年金額が400万円というと、1カ月に33万円以上の年金を受け取っている計算になる。しかしながら、現在、公的年金の老齢年金の平均受給額は月額約15万円であり、月額30万円以上の老齢年金を受け取る人は全受給権者の0.1%しか存在しない。(令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況/厚生労働省)
図表11

そのため、年金額だけを考えれば、多くの受給者は確定申告が不要になるだろう。
ただし、来月(令和8年2月)から始まる確定申告については、“例年にはない理由” で申告手続きをしたほうがよいケースもあるので注意が必要である。令和7年税制改正の影響があるからです。
令和7年3月31日、令和7年度の税制改正関連法が国会で成立した。その結果、所得税では基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設が行われ、令和7年分の所得税から適用されている。年金受給者の場合、改正に伴う税精算は特段の手続きをすることなく、令和7年12月の年金支払い時に終了している。
ただし、次のような事情がある場合には、確定申告をすることで所得税の還付を受けられる場合がある。
① 新設された「特定親族特別控除」の適用を受けたい。 ②「新たに扶養親族などの要件を満たした親族」の控除の適用を受けたい。 ③ 2025(令和7)年 12月の年金支払いで精算しきれていない分を精算したい。 |
今回届いた源泉徴収票は、老齢年金の受給者が一昨年(令和6年)に提出した扶養親族等申告書の記載内容を踏まえたものである。そのため、令和7年12月の年金支払いで税制改正に伴う基本的な税精算は終了しているものの、改正の内容がすべて反映されたわけではない。したがって、①の「特定親族特別控除」の適用や②の「新たに扶養親族などの要件を満たした親族」の控除の適用を受けるには、確定申告による手続きが必要である。
また、令和7年税制改正では基礎控除は58万円に引き上げられた上で、さらに所得に応じて5万円から37万円が段階的に上乗せされている。つまり、合計所得金額がいくらかによって、適用になる基礎控除の額が異なる仕組みが取り入れられたわけである。
しかしながら、令和7年12月の年金支払い時に行われた税精算では、この仕組みが反映されていない。そのため、受給者によっては12月の税精算時に使用された基礎控除と本来の基礎控除とが相違する可能性があり、その結果、12月の年金支払いでは精算しきれないという状況が発生することもあるようである。
このような場合にも、確定申告をすることで所得税の還付を受けられる場合がある。このような現象が起きる可能性があるのは合計所得金額が88万円超132万円以下のケースで、具体的には次の年金額の場合に当たる。
|
加えて、年の途中から年金をもらい始めたなど、年金額が上記の範囲外でも該当するケースがあるとのことである。そのため、「私は確定申告不要制度の対象だから、今年も申告はしなくて大丈夫」などと早合点はしないほうがよいだろう。
これから始まる確定申告では、例年よりも税還付が発生するケースがあるといえるだろう。気になる方は、所轄の税務署などで相談をしてみるのもよいかもしれない。
今回のまとめ
|
【参 考】

Lectures by the Labor and Social Security Attorneys



