2026年4月からの年金額【後編】(国民年金保険料・在職老齢年金)
更新日:36 分前
大須賀信敬(特定社会保険労務士)
2026年度の年金額が発表された。でも、なぜこの金額になったのかについて、明確な根拠が分かる人は少ないだろう。新年度の年金額決定に関して前回のコラムでは、基礎年金と厚生年金の年金額の検証を行った。後編の今回は、国民年金の保険料や在職老齢年金の停止基準についてみていこう。

目 次
やっぱり有利な会社員・公務員
前回の年金額改定から「ライフコースに応じた年金額」が提示されるようになった。これは加入していた年金制度の違いが年金額にどう影響するかについて、およその検討がつくようにした仕組みである。具体的には、「どの制度に20年以上加入したか?」により、次のような5種類のパターンが示されています。
① 厚生年金期間中心の男性 ② 国民年金の第1号被保険者期間中心の男性 ③ 厚生年金期間中心の女性 ④ 国民年金の第1号被保険者期間中心の女性 ⑤ 国民年金の第3号被保険者期間中心の女性 |
たとえば、①の「厚生年金中心の男性」であれば、「厚生年金の加入期間が20年以上ある男性」ということを表している。「令和6年度に65歳になる人の加入期間・収入データ」をもとに算出すると、各ライフコースの年金月額は次のとおりとのことである。
※ カッコ内は前年度との差額 ① 厚生年金期間中心の男性…月176,793円(3,336円増) ② 国民年金の第1号被保険者期間中心の男性…月63,513円(1,169円増) ③ 厚生年金期間中心の女性…月134,640円(2,523円増) ④ 国民年金の第1号被保険者期間中心の女性…月61,771円(1,135円増) ⑤ 国民年金の第3号被保険者期間中心の女性…月78,249円(1,439円増) |
年額にすると①40,032円増、②14,028円増、③30,276円増、④13,620円増、⑤17,268円増となる。
なお、厚生労働省が提示したライフコースに応じた年金額では、金額計算の根拠に使用した正確な年金記録が示されていない。そのため、残念ながら上記額を正確に検証することは困難である。
それでは、それぞれの金額を比較したグラフを見てみよう。
図表01

上図を見ると、会社や役所などの勤務期間が長い人(①、③)のほうが、自営業者・フリーランサーなどの期間が長い人(②、④)よりも年金額が2倍以上多いことが分かる。会社勤めなどの期間は国民年金と厚生年金の2つの制度から年金をもらえるので、国民年金からしか年金をもらえない自営業者などの期間よりも当然、受け取り額が多くなる。
また、会社や役所などの勤務期間が長い男性(①)と女性(③)とでは、男性のほうが3割以上多い年金を受け取れるようである。女性は男性よりも厚生年金の加入期間が短くなりやすく、給料も低くなりがちである。そのため、年金額は男性がかなり有利になることが分かる。
なお、専業主婦や夫の扶養内で働いた期間が長い女性(⑤)の年金額は、会社や役所などの勤務期間が長い女性(③)の6割に満たないようだ。第3号被保険者の期間は保険料を払わなくて済むものの、年金も国民年金からしかもらうことができないためである。
国民年金保険料は18,000円の大台へ
次は国民年金の保険料額を検証してみよう。厚生労働省が発表した前述の資料によると、1カ月当たりの保険料額は令和8年度は17,920円で前年度から410円増、翌令和9年度が18,290円で同じく370円増とのことである。果たして、どのような計算でこの数値が導き出されたのだろうか。
国民年金の保険料も年金額と同じように、“モノの値段” “給料の額” の変動に応じて金額が改定される。令和8年度の保険料額から検証してみよう。同年度の保険料は、「平成16年度の改正で決められた保険料額」に「令和8年度の保険料改定率」を掛けることで算出できる。
それでは、実際に計算してみよう。はじめに、「令和8年度の保険料改定率」は、次のように計算する。
■ 令和8度の保険料改定率 =令和7年度の保険料改定率 ×物価変動率(令和6年の値) ×実質賃金変動率(令和3年度から令和5年度の平均値) =1.030×2.7%×マイナス0.4% =1.030×1.027×0.996 =1.053578… ≒1.054 |
計算の結果、「令和8年度の保険料改定率」は1.054となった。次に、「平成16年度の改正で決められた保険料額」に1.054を乗じる。「平成16年度の改正で決められた保険料額」は17,000円なので、次のような計算を行う。
■ 令和8年度の国民年金保険料額 =平成16年度の改正で決められた保険料額×令和8年度の保険料改定率 =17,000円×1.054 =17,918円 ≒17,920円 |
計算の結果、令和8年度の国民年金の保険料額は、1カ月当たり17,920円となった。厚生労働省が発表した資料の数値と一致していることが分かると思う。
図表02

出典:厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』に筆者加筆
同じ考え方で令和9年度の国民年金保険料も検証してみよう。「平成16年度の改正で決められた保険料額」に「令和9年度の保険料改定率」を掛ければ令和9年度の国民年金の保険料額は計算できる。
それではやってみよう。まず、「令和9年度の保険料改定率」は、次のように計算する。
■ 令和9年度の保険料改定率 =令和8年度の保険料改定率 ×物価変動率(令和7年の値) ×実質賃金変動率(令和4年度から令和6年度の平均値) =1.054×3.2%×マイナス1.1% =1.054×1.032×0.989 =1.0757629… ≒1.076 |
計算の結果、「令和9年度の保険料改定率」は1.076となった。次に、「平成16年度の改正で決められた保険料額」に1.076を乗じる。「平成16年度の改正で決められた保険料額」は17,000円なので、次のような計算を行う。
■ 令和9年度の国民年金保険料額 =平成16年度の改正で決められた保険料額×令和9年度の保険料改定率 =17,000円×1.076 =18,292円 ≒18,290円 |
計算の結果、令和9年度の国民年金の保険料額は、月に18,290円となった。こちらも厚生労働省発表の資料の数値と一致していることが確認できる。
図表03

出典:厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』に筆者加筆
それでは、国民年金保険料の最近の推移を見てみよう。
図表04

令和6年度からずっと上がり続けていることが分かる。
調整額が大幅アップの在職老齢年金
最後に、在職老齢年金の支給停止調整額を検証しよう。厚生労働省が発表した前述の資料では、令和8年度の支給停止調整額は65万円とされている。前年度の51万円から14万円の大幅アップが実施されることになりますが、どのような計算でこの数値が導き出されたのだろうか。
在職老齢年金の支給停止調整額は、令和7年の年金制度改正により「令和6年度の金額で62万円にすること」が決定された。具体的な調整額は、62万円に毎年度の名目賃金変動率を掛けることで金額が改定される。令和8年度の場合には、62万円に令和7年度と令和8年度の名目賃金変動率を掛けた結果、65万円と算出されているはずである。
それでは確認をしてみよう。はじめに、令和7年度の名目賃金変動率から算出すると、次のようになる。
■ 令和7年度の名目賃金変動率 =実質賃金変動率(令和3年度から令和5年度の平均値) ×物価変動率(令和6年の値) =マイナス0.4%×2.7% =0.996×1.027 =1.022892 ≒1.023 |
令和7年度の名目賃金変動率は1.023だと分かった。次に、令和8年度の名目賃金変動率を計算しよう。
■ 令和8年度の名目賃金変動率 =実質賃金変動率(令和4年度から令和6年度の平均値) ×物価変動率(令和7年の値) =マイナス1.1%×3.2% =0.989×1.032 =1.020648 ≒1.021 |
こちらは1.021と計算できた。これらの数値を用いて令和8年度の調整額を計算すると、次のとおりである。
■ 令和8年度の在職老齢年金の支給停止調整額 62万円×令和7・8年度の名目賃金変動率 =62万円×1.023×1.021 =647,579.46円 |
計算結果は647,579.46円となった。この計算結果の千の位を四捨五入するので、65万円となるわけである。厚生労働省の資料に記載の数値と一致していることが分かるだろう。
図表05

出典:厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』に筆者加筆
それでは、支給停止調整額の最近の推移を見てみよう。
図表06

近年にない大幅アップであることがよく分かる。
調整額が増えるということは、同じように働いても年金がカットされづらくなることを意味する。この変更がシニア層の就労にどのような影響を与えるか、興味深いところである。
前回、今回と2回にわたる年金額改定のコラムには、いろいろな計算式が登場した。「数字が苦手」という方には、少しとっつきにくい内容だったかもしれない。しかしながら、計算の仕組みがわかると、年金の制度理解も進むものである。ぜひ、電卓を使いながら、もう一度コラムを読み直していただきたい。
今回のまとめ
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【参 考】

Lectures by the Labor and Social Security Attorneys



