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【令和8年4月】「子ども・子育て支援金制度」が開始

4月5日
読了時間: 9分

更新日:7 日前

大須賀信敬(特定社会保険労務士)


令和8年4月から、『子ども・子育て支援金制度』という新しい制度が始まることをご存じだろうか。この支援金制度が始まると、私たちの経済的な負担は少なからず増加するようである。そこで今回は、「独身税」と揶揄(やゆ)されることもある本制度の内容を見てみよう。



目 次


■ 支援金制度は「資金を支援する制度」ではない

「子ども・子育て支援金制度」という名称から、皆さんはどんな制度を思い浮かべるだろうか。子育てなどに必要な「資金を支援する制度」という印象を持つ人が多いかもしれない。


しかしながら、この制度は「資金を支援する制度」そのものではない。支援に必要な「資金を集める制度」である。


皆さんはこども未来戦略「加速化プラン」という名称を聞いたことがあるだろうか。こども未来戦略「加速化プラン」とは、政府が今から3年ほど前の令和5年12月に策定したもの。このプランでは「若い世代が希望どおりに結婚し、希望する誰もが子どもを持ち、安心して子育てできる社会、子どもたちが笑顔で暮らせる社会の実現」を目指している。


この目的を達成するため、わが国では子ども・子育て支援の拡充を実施することが決定した。そこで、『子ども・子育て支援金制度』という「資金を集める制度」を新設し、制度実施に要する費用の一部に充てることになった。


つまり、『子ども・子育て支援金制度』とは「子育てを支援する制度」の名称というよりも、「子育てを支援する制度」の “財源確保手段” の名称といえる。


図表01


■ 会社員の支援金は給料から自動的に徴収される

『子ども・子育て支援金制度』を所管するこども家庭庁では、令和8年度に国民が負担する支援金の額を次のとおり試算している。

■ 2026年度の平均的な支援金額(推計)

  • 健康保険組合の被保険者 … 1人あたり月に約550円

  • 国民健康保険に加入する世帯 … 1世帯あたり月に約300円

  • 後期高齢者医療制度の被保険者 … 1人あたり月に約200円


たとえば、健保組合に入っている会社員であれば平均的なケースで毎月550円、1年で6,600円の支援金が徴収されることになったわけである。


子ども・子育て支援の拡充に充てられる上記支援金は、公的な医療保険の保険料と合わせて徴収される。そのため、会社員の場合には、健康保険料と一緒に給料から直接天引きされることになる。


1人あたりの支援金の額は、標準報酬月額に「子ども・子育て支援金率」を掛けた額である。令和8年度の「子ども・子育て支援金率」は0.23%。したがって、標準報酬月額×0.23%で計算された額が1人あたりの支援金の月額になる。


ただし、健康保険の保険料と同じように、半分は企業が払わなければならない。そのため、実際に従業員の給料から天引きされる支援金は、標準報酬月額の0.115%分(=0.23%÷2)になる。


たとえば、標準報酬月額が30万円の従業員の場合には、月々の給料から引かれる支援金は次のとおりとなる。

標準報酬月額×0.23%÷2

=30万円×0.23%÷2

=345円


1年間では4,140円(=345円×12カ月)の負担である。


徴収の対象は、令和8年4月分の支援金から。実際には、翌5月に支給される給料から天引きが始まる。


なお、支援金はボーナスからも引かれる。具体的には、標準賞与額に「子ども・子育て支援金率」0.23%を掛けた額の半分が、差し引かれることになる。ボーナス額が100万円であれば、1,150円(=100万円×0.23%÷2)が従業員負担分の支援金額である。


ただし、産休中や育児休業中の場合には、健康保険の保険料と同じように支援金の徴収も免除される。


国民健康保険に加入する自営業者やフリーランサー、後期高齢者医療制度の加入者の場合は、個人の所得額などに応じて徴収される支援金が決定される。具体的な料率は地域ごとに異なりますが、令和8年4月分から徴収される点は会社員と同じである。


専業主婦の場合には、夫の健康保険などの扶養扱いになっていることが通常である。扶養扱いで健康保険に入っている場合には、本人に健康保険料の支払い義務がない。支援金は健康保険料と合わせて徴収される仕組みなので、健康保険料の支払い義務がない専業主婦の場合は支援金を直接支払うこともない。学生も同様である。


図表02


■ 毎年、値上がりする支援金

毎年の支援金の割合は同じではない。実は、制度開始当初の3年間は毎年、支援金を値上げすることが決定している。


こども家庭庁では、国民と会社から集める支援金の総額は令和8年度が6,000億円程度であるのに対し、令和9年度は8,000億円程度、令和10年度は1兆円程度としている。


支援金制度が始まって2年目は初年度よりも3割以上多い額を、3年目は初年度よりも6割以上多い額を徴収することがすでに決まっているわけである。


これに伴い、個々人から徴収する支援金も、令和8年度より令和9年度のほうが多くなる。

さらに、令和9年度よりも令和10年度のほうが多くなることが予定されている。


■ 集まった資金は児童手当の拡充などに

徴収した支援金は、おもに次の6つの事業に使用されます。

■ 支援金が充てられる6つの事業

(1)児童手当の拡充

(2)妊婦のための支援給付の創設

(3)こども誰でも通園制度の創設

(4)出生後休業支援給付の創設

(5)育児時短就業給付の創設

(6)育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設


具体的には次のとおりである。


(1)児童手当の拡充

  • 所得制限の撤廃 … 従来の所得制限を撤廃し、所得が高い保護者にも支給する。

  • 支給期間の延長 …3年間延長し、高校生年代までの子どもを対象にする。

  • 第3子以降の増額 … 第3子以降については、1人あたり月3万円に増額して支給する。


(2)妊婦のための支援給付の創設

妊娠届出時に5万円、妊娠後期以降に妊娠している子どもの数×5万円を支給する。


(3)こども誰でも通園制度の創設

保育所などに通っていない0歳6カ月から満3歳未満の子どもについて、子ども1人あたり月に10時間まで時間単位などで柔軟に利用できる通園制度を設ける。


(4)出生後休業支援給付の創設

子どもの出生直後の一定期間内に両親ともに14日以上の育児休業を取った場合、最大28日間について、出生時育児休業給付金と合わせて手取りベースで10割分の賃金に相当する給付を行う。


(5)育児時短就業給付の創設

子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、時短勤務時の賃金の原則10%相当額を支給する。


(6)育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設

自営業者やフリーランサーなどの国民年金の第1号被保険者を対象に、子どもが1歳になるまでの間、国民年金保険料の納付を免除する措置を創設する。


実は、上記の子ども・子育て支援の拡充施策の多くは、すでに開始されている。それぞれの事業の具体的な開始時期は、下図のとおりである。


図表03


『子ども・子育て支援金制度』の創設により、子ども1人あたり平均で約146万円の給付が拡充できると説明されている。


■ 負担があるのに「実質負担ゼロ」のカラクリ

こども家庭庁では『子ども・子育て支援金制度』を周知するため、下図のようなリーフレットを作成している。


図表04















出典:こども家庭庁ウェブサイト


このリーフレットを見ると、『子ども・子育て支援金制度』の導入に要する費用について次のように説明している。

~社会保障の歳出改革を行い、社会保険料の負担を軽減させるため、支援金による負担は相殺される仕組みになっています。このため支援金の導入による実質的な負担はありません。


具体的には、令和5年度から薬価の改定や薬価制度の見直しなどを行い、令和8年度までに累計で6,000億円程度の削減が行われることになるようである。令和8年度の支援金の総額は、前述のとおり6,000億円程度である。歳出削減の範囲内で実施するのだから、国民に「実質的な負担が生じるわけではない」という理屈のようだ。


皆さんんは「実質的な負担はない」や「実質負担はゼロ」と聞くと、どのような状況を思い浮かべるだろうか。具体的に考えてみよう。


たとえば、今、支払っているものが100あるとする。この100が80に減るかわりに、差額の20は支援金として徴収されるとしよう。そのため、支払いの合計は100のままで、今までと変わらない。


一般的な国民の場合は、このような状態を「実質的な負担はない」と考える人が多いだろう。


ところが、政府の説明する「実質的な負担はない」はこれとは異なり、次のような意味になる。

今、支払っているものが100あり、来年は120になることが見込まれている。しかし、来年はそれを100に抑え、かわりに120との差額の20は支援金として徴収する。その結果、支援金制度を導入しても導入しなくても、来年の負担の合計は120で同じになる。だから、支援金制度を導入することによる負担増はないといえる。


これが、政府の説明する「実質的な負担はない」の考え方である。


「実質的な負担はない」と聞くと、多くの国民は “現在の負担” と比較して考えるものだ。

“現在の生活” がもっとも大切であり、また、大変でもあるからである。


これに対し、政府は “現在の負担” との比較には明確に触れず、「実質的な負担はない」ばかりを強調している。これでは話が通じるはずがない。


図表05


確かに、歳出削減施策として薬価の改定や薬価制度の見直しを実施しなかった場合には、高齢化の進展などによって増えたコストが社会保険料負担の増加に跳ね返ってくる可能性があるだろう。


そのような状況を回避、抑制できた範囲内で支援金制度を行うのだから、現状よりもトータルでは負担は増えるけれども、見込まれている将来の社会保険料の増額は行わないということのようである。これが「実質負担ゼロ」のカラクリだ。


「負担は現状より増えない」というのであれば、国民はその事実を自身で確認することができる。しかしながら、「見込まれている将来の負担増額を行わない」という場合、国民にはそれが事実であることを確認する術(すべ)がない。「本当に将来の負担増額は見込まれているのか?」「新制度を導入するための “こじつけ” ではないか?」などの疑念が沸くはずである。


新しい政策を広報する際には、国民にこのような疑念や誤解を生じさせることのないよう、十分な配慮が必要である。そうでなければ、政府が説明する「実質負担ゼロ」は、「信じるか信じないかはあなた次第」になってしまう。


『子ども・子育て支援金制度』に対しては、さまざまな世代の国民から批判が集まっている。若者や子どもがいない層からは「制度の恩恵を受けられないのに、支援金の支払いを強制されるのはおかしい」という批判があるようだ。このような思いが「独身税」という言葉を生み出したのだろう。


また、子育て世代には「自分に支援する資金を自分で払わされるのだから意味がない」という批判もある。さらに、高齢者の場合には「支援金は年金から引かれるので、年金の手取りが減って生活に影響を及ぼす」などの声もあるようである。


「実質負担はゼロ」の説明に納得できない国民も少なくない。これだけの批判を受ける中、間もなく支援金の徴収が否応なく始まる。皆さんはどう思うだろうか。


今回のまとめ

  1. 『子ども・子育て支援金制度』は「子育てを支援する制度」の財源確保措置である。

  2. 支援金は公的医療保険料と合わせて徴収される。会社員に対する令和8年度の支援金率は0.23%である。

  3. 最初の3年間は、支援金の負担が年々増額される。

  4. 支援金は児童手当の拡充などの6事業に活用される。

  5. 『子ども・子育て支援金制度』は歳出改革の範囲内で実施される。ただし、国民の負担は現状よりも増加する。


【参 考】



Lectures by the Labor and Social Security Attorneys

 
 

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