「年上の部下」はどうマネジメントする

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


あなたの職場では人事部門に「今度の中途採用者は扱いづらい」「指示に素直に従わずに困っている」などの相談が持ち込まれることはないだろうか。このような問題は、中途採用者の年齢が配属された職場の社員よりも上の場合に発生することがある。「年上の部下」の突然の登場に、“年下の上司・先輩” の戸惑いの声が寄せられることがあるようだ。


社内でのキャリアと実年齢が逆転する職場

昨今、多くの職場で社内でのキャリアと実年齢の関係が逆転しがちである。


総務省が実施した2019年の労働力調査(平均、速報)では、過去1年間に転職を経験した人数は351万人。そのうち、35歳以上の転職者が195万人であり、実に全転職者の半数以上が35歳以上である。


そのため、必ずしも年齢が上の社員が、職場で上司・先輩の立場にあるとは限らず、多くの職場で「年上の部下」と “年下の上司・先輩” という関係が見られる。20歳代の社員のもとに30歳代、40歳代の中途採用者が部下として配属されることは、珍しい光景ではなくなっている。


「自分と自分の経験に敬意を払って欲しい」と考える「年上の部下」

このように社会人経験のある中途採用者を指導する際は、彼らの心理状態の特徴を理解することが大切である。「年上の部下」にとり “年下の上司・先輩” から教えを受けるというのは、あまり気持ちの良いものではないからである。


「心を新たにして取り組まなければいけない」と理屈では分かっていても、自身の経験に照らして「そんなことくらい分かっている!」などの気持ちが先に立ってしまいがちなのが「年上の部下」である。「自分を小さく見られたくない」「バカにされたくない」「仕事ができると思われたい」などの思いを強く持つ「年上の部下」も少なくない。


根底には「年上の部下」には、「自分と自分の経験に敬意を払って欲しい」という気持ちが存在する。まずは、「年上の部下」の心理状態には、このような傾向があることを理解することが必要だ。


“年下の上司” が起こしがちなコミュニケーションミス

その上で、「年上の部下」に指示を素直に聞いてもらうためには、常日頃のコミュニケーションのとり方に注意が必要となる。「年上の部下」が素直に指示に従うかどうかは、日常のコミュニケーションが円滑にとれているかに左右されることが多いからである。


“年下の上司・先輩” の中には「自分のほうが先輩である」「相手になめられたくない」などの思いから、「年上の部下」に次のような態度をとるケースがある。

  • 偉そうにふるまう

  • 見下したような態度をとる

  • 命令口調で話す

  • 友達言葉(いわゆる “ため口” )になる

  • 横柄になる

“年下の上司・先輩” のそのような対応を「年上の部下」が快く思うことは、決してない。


確かに、「年上の部下」は社内では部下である。しかしながら、「社会人の先輩」であることには変わりがない。担当業務に関しては “年下の上司・先輩” のほうが詳しくても、その他のことでは、「年上の部下」から学ぶことも少なくないはずである。


年長者であることに配慮した対応を

従って、日々のコミュニケーションの際には、とりわけ「挨拶」「言葉遣い」「礼儀」などの基本的なビジネスマナー面で、相手が自分よりも年長者であることに配慮した対応をとることがポイントになる。


そのような配慮をしていることは、「年上の部下」にもしっかりと伝わるものである。常日頃から相手を「社会人の先輩」として正しいマナーで接していれば、「年上の部下」は “年下の上司・先輩” の立場を理解し、素直に指示を聞き入れるケースが多くなる。


反対に、普段の対応がぞんざいであると、“年下の上司・先輩” の指示に対して、思わぬ反論をはじめることも少なくない。


普段から自分よりも年長者に対するコミュニケーションが適切にとれ、好ましい人間関係が構築できていれば、「年上の部下」は困ったときにしっかりと助け舟を出してくれる心強い存在になるものである。

© 2007 ConsultingHouse PLYO