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「挨拶が組織を変える」~企業風土の改善と挨拶の効用~

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


「ウチの職場には協力的な雰囲気がない」「社内の雰囲気が沈滞気味である」などの声を聞くことが多い。このような状況を改善するために、挨拶の仕方を見直すことが有効なのをご存知だろうか。



『適切な挨拶』がない職場は「後ろ向きな社員」が増える

昨今、『適切な挨拶』ができていない “職場” が多いことに驚く。たとえば、

  • 声が小さいため挨拶がほとんど聞こえない。

  • 相手を見ないで挨拶をする。

  • 挨拶をしているときの顔が笑っていない。

  • 「おはようございます」を「ざーっす」などと言う。

  • 相手から挨拶をされたときだけ挨拶を返す。

  • 相手が挨拶をしても挨拶を返さない。

などである。


このように『適切な挨拶』ができていない職場には、社員が「後ろ向き」「消極的」「非協力的」な考え方を持ちやすいという特徴がある。社員のモチベーションが低いため、「遅刻・欠勤が多い」「指示がなければ動かない社員が多い」「組織運営に非協力的な社員が多い」「権利ばかりを主張し、義務を果たさない社員が多い」などの状況に陥りがちである。その結果、社員間での好ましい連携が生まれにくく、退職者も多いようである。


これに対して、『適切な挨拶』ができている職場では、社員が「前向き」「積極的」「協力的」な考え方を持つ傾向にある。社員のモチベーションが高いため遅刻・欠勤が少なく、皆が組織運営に協力的で、とても雰囲気の良い、明るい職場環境が構築されているケースが多い。


それでは、そもそも『適切な挨拶』とはどのような挨拶のことを言うのだろうか。『適切な挨拶』とはたとえば、次の条件を満たす挨拶のことである。

  • 相手の目を見て、笑顔で言葉を発していること。

  • 相手に聞こえるような声の大きさで発していること。

  • 正しい言葉で発していること。


朝の出勤時には相手の目を見ながら笑顔で、相手に聞こえるように「おはようございます!」と言うことが『適切な挨拶』の仕方と言える。従って、「相手の目を見ない」「相手に聞こえない」「笑っていない」「ざーっすなどと言う」はどれも『適切な挨拶』とは言えない。


上司が先に挨拶をすると、挨拶が組織の習慣になる

それでは、今まで『適切な挨拶』を行えていなかった職場が『適切な挨拶』ができる職場に変わるためには、どうすればよいだろうか。もちろん、『適切な挨拶』とは何かを全員が理解することが必要だが、『適切な挨拶』を職場に根付かせるためには、上司から先に部下に対して挨拶をすることが非常に重要になる。


部下を持つ立場の方の中には、部下が挨拶をしたら自分も挨拶を返すという方が散見されるが、そのような上司がマネジメントする職場で『適切な挨拶』が根付くことはほとんどない。そのような上司の下では、部下が『適切な挨拶』をすぐにやらなくなってしまうからである。


反対に、朝の出勤時に上司から先に部下の目を見ながら笑顔で、部下に聞こえるように「おはようございます!」と毎日言われたら、部下が『適切な挨拶』を返さないはずがない。『適切な挨拶』が組織に根付くかは、上司の取り組み姿勢次第と言える。


また、『適切な挨拶』は朝の出勤時にだけ必要なわけではない。社内ですれ違ったら「お疲れ様です!」、外出するときは「行ってきます!」、外出する相手には「行ってらっしゃい!」、外出から戻ったら「戻りました!」、外出から戻った相手には「お帰りなさい!」、退社するときは「お先に失礼します!」。これら全ての挨拶を相手に聞こえるように、相手の目を見ながら笑顔で正しい言葉で発することが大切である。


挨拶の文化が『動く人材』を生み出す

不思議なもので組織にこのような挨拶の文化が根付くと、次第に社員一人ひとりの行動に変化が現れるようになる。


自分の仕事が終わればさっさと退社していた社員が「何かお手伝いしましょうか」と声を掛け始める、業務報告を怠りがちだった部下の報告・連絡・相談の頻度が増える、いつも突然休暇申し出ていた社員が日にちに余裕をもって休暇日の打診をしてくるなど、指示されなくても自ら好ましい行動を起こす、いわゆる『動く人材』に変わり始めるものである。


『適切な挨拶』が組織の習慣になると社員が『動く人材』へと変化し、組織や企業の風土が協力的で明るく前向きに変化する。もしも、企業風土を改善しようと考えるのであれば、たかが挨拶と思わずぜひ試したいものである。もうすぐ4月。新しい社員を迎える職場も多いはずである。組織をあげて『適切な挨拶』の習慣化に取り組むには絶好の時期といえよう。

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