在宅勤務導入企業が「テレワーク就業規則」「在宅勤務規程」を作る場合の着眼点

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


現在、新型コロナウイルス感染症のまん延に伴い、在宅勤務などで出勤者数を削減することが要請されている。ところで、各企業では従業員に在宅勤務を命じるに当たり、就業規則・在宅勤務規程などの整備を行っているであろうか。



そもそも在宅勤務に関する就業規則・規程は必要か

現在、厚生労働省ではウェブサイト上で『テレワークモデル就業規則~作成の手引き~』を公開している。この手引きでは、在宅勤務に関する就業規則などの必要性について、次のように説明している。


「通常勤務とテレワーク(在宅勤務、サテライトオフィス勤務及びモバイル勤務をいう。以下同じ。)において、労働時間制度やその他の労働条件が同じである場合は、就業規則を変更しなくても、既存の就業規則のままでテレワーク勤務ができます。しかし、例えば従業員に通信費用を負担させるなど通常勤務では生じないことがテレワーク勤務に限って生じる場合があり、その場合は、就業規則の変更が必要となります。」

《厚生労働省『テレワークモデル就業規則~作成の手引き~』より》


この説明に従えば、在宅勤務と職場に出勤して行う通常勤務とで、労働条件などが全く変わらないのであれば、新たに在宅勤務に関する就業規則・規程を整備する必要はないことになる。


これは、「従業員を採用した後、企業が業務上の理由から就業場所や従事する業務を変更することは、変更がない旨の特別な合意などがない限り可能である」との考え方が存在することによる。そのため、労働条件などが全く変わらないのであれば、在宅勤務に関する就業規則・規程を整備しなくても、現行の就業規則のままで従業員に在宅勤務を命じられると考えられている。


しかしながら、在宅勤務と通常勤務とでは執務環境が大きく相違する。そのため、自社の在宅勤務の内容に応じて就業規則・規程を整備しておいたほうが、想定外の従業員トラブルを回避しやすくなる。


従って、現行の就業規則の適用範囲の項に「従業員の在宅勤務に関する事項については、この規則に定めるもののほか別に定めるところによる」などの委任規定を入れ、別途、在宅勤務の詳細を定めた在宅勤務規程を作成するほうが好ましいといえよう。


在宅勤務規程の作成で注意したい5つのポイント

現行の就業規則に委任規定を入れた後は、自社の在宅勤務の内容に則した在宅勤務規程を作成することになる。在宅勤務規程作成上の注意点は多数あるが、特に注意をしたいのは次の5点である。


1.在宅勤務の対象者

厚生労働省のテレワークモデル就業規則は、在宅勤務を行う対象者を「在宅勤務を希望する者」としている。しかしながら、このような定めを置いた場合、希望しない従業員には在宅勤務をさせられないことになる。従って、在宅勤務規程の対象者の項には、「会社は社員に対し、業務上の必要により、在宅勤務を命ずることができる」などの定めを入れ、企業側が従業員に在宅勤務を命じられる仕組みにしておくことが重要である。 


2.通勤手当

通勤手当については、一般的に定期代相当額を毎月定額で支給する企業が多いであろう。しかしながら、在宅勤務で出社回数が減少した場合、定期代相当額を定額で支給する必要がないケースも発生する。従って、在宅勤務の日数が多い従業員については、定期代相当額に代えて実際に通勤に要する交通費を支給する方法を検討したい。例えば、「在宅勤務日数が週〇日以上の場合は、交通費の実費を支給する」などと定めることが考えられる。


3.費用負担

在宅勤務で使用するパソコン・プリンター・携帯電話・スマートフォンなどの購入費用、在宅勤務で発生するインターネットの通信費、電話料金、水道光熱費、消耗品費などについて、企業側及び従業員側がそれぞれどの程度負担するのかを定めておくことが重要である。また、これらの費用について従業員に一定程度の負担を求める場合に、その代替として在宅勤務手当などを支給するのであれば、その点についても定めておく必要がある。


4.報告義務

在宅勤務では勤務の開始及び終了時刻を確認し、在宅勤務者の日々の労働時間を把握することが必要となる。そのため、例えば在宅勤務の開始・終了時に直属の上席者に対するメール連絡を義務付ける、パソコンの使用時間・勤怠管理システム・ウェブ会議システム・チャットアプリなどを活用して労働時間を管理するなどのルールを定めておくことが重要である。また、定期的な業務報告・緊急時の連絡体制などについても定めておくとよい。


5.服務規律

在宅勤務独自の服務規律を定めることが重要である。例えば、「在宅勤務中は業務に専念すること」「自宅以外の場所で業務を行わないこと」「業務資料のコピー、第三者閲覧、自宅外持ち出しをしないこと」などの定めが必要となる。また、パソコンなどの機器を企業側が貸与する場合には、「貸与を受けた機器以外を業務に使用しないこと」「貸与を受けた機器に新たなアプリケーションをインストールしないこと」などの定めも必要であろう。


現行の就業規則の変更と在宅勤務規程の作成が終了したら、管轄労働基準監督署への届け出が必要となる。従業員代表の意見書を添付し、忘れずに届け出るようにしたい。