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2022年4月から「年金手帳」が廃止になりました

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


2022年4月から、年金手帳が廃止されたことをご存じだろうか。今回は、年金手帳の廃止に伴う社会保険事務上の留意点を整理してみよう。



役目を終えた「年金手帳」

年金手帳とは、個々人の基礎年金番号を通知する目的で発行される青い小冊子である。


元来、年金手帳は年金に関するさまざまな個人情報も記載できるよう、冊子形式で発行されてきた。しかしながら、現在では年金に関する個人情報はシステム管理されているため、手帳に記載する必要性が低下している。


また、従来、年金関係の手続きでは、手続き用紙に記入した基礎年金番号を確認するため、年金手帳の添付を求められることが多かったが、現在では手続き用紙にマイナンバーを記入すれば基礎年金番号の記入は不要で、年金手帳の添付も必要ない。


このような環境変化を踏まえ、2022年4月からは冊子形式の年金手帳の発行をやめ、「基礎年金番号通知書」というカードの発行に変更されることになった。


今回の変更に伴い、社会保険事務上は以下の点に留意をしたい。


1.「年金手帳」の代わりに「基礎年金番号通知書」が発行される

2022年4月からは、20歳になったときや初めて厚生年金に加入したときなどには、年金手帳に代わって「基礎年金番号通知書」が発行され、通知書に本人の基礎年金番号が印字されている。例えば、本年3月に高校を卒業して4月に入社する新入社員の場合には、厚生年金の資格取得手続きを行うと、日本年金機構からこれまでの手帳に代わるものとして「基礎年金番号通知書」が届くことになる。


2.「基礎年金番号」は廃止にならない

今回、廃止されるのはあくまで年金手帳であり、手帳に印字されている基礎年金番号が廃止になるわけではない。基礎年金番号は現在の番号が今後も有効になる。


3.発行済みの「年金手帳」を差し替えるわけではない

社員に発行済みの年金手帳を、「基礎年金番号通知書」に差し替えるわけではない。そのため、誤って社員から手帳を回収しないように気を付けたい。また、社員が年金手帳を処分してしまわないよう、注意喚起を行うのもよいだろう。


4.発行済みの「年金手帳」は引き続き使える

発行済みの年金手帳が使えなくなるわけではなく、2022年4月以降も使用可能である。そのため、4月以降の採用手続きの際、年金手帳を持参した新規採用者に対し、あらためて「基礎年金番号通知書」の提示を求めるなどは必要ない。


5.「年金手帳」の再発行はできなくなる

従来、年金手帳を紛失した場合には、新しい手帳の再発行を受けられた。ところが、2022年4月からは、年金手帳を紛失しても手帳が再度発行されることはなく、代わりに「基礎年金番号通知書」が発行される。再発行を希望した社員には、通知書が手帳に代わるものであることを説明する必要がある。


なお、「基礎年金番号通知書」という名称の書面が発行されるのは、今回が初めてではない。例えば、共済組合に加入する公務員に対しては、従前より年金手帳の代わりに「基礎年金番号通知書」が発行されている。また、基礎年金番号の制度が始まった1997年には、多くの国民に自身の基礎年金番号を知らせる「基礎年金番号通知書」という書面が送付された。そのため、2022年3月以前の日付の「基礎年金番号通知書」が存在することも、押さえておくとよいだろう。

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