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「 “マスク” を付けたまま行うコミュニケーション」で注意すべきポイント

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


新型コロナウイルス感染症の影響で、マスクを付けて仕事をすることが常態化した。同僚や顧客、取引先とコミュニケーションをとる際も、マスクを付けたまま行わなければならない。ところで、マスクを付けたまま行うコミュニケーションは、今までのコミュニケーションと比べ、何か違いがあるのだろうか。注意すべき点などが存在するのだろうか。



『スマイル』と『アイコンタクト』がコミュニケーションの基礎

ビジネスコミュニケーションにはさまざまな種類があるが、あらゆるコミュニケーションの土台を成す基礎的技術が2つある。『スマイル』と『アイコンタクト』である。


好ましいビジネスコミュニケーションは、この2つの技術の上に成立する。そのため、『スマイル』と『アイコンタクト』を疎かにしたコミュニケーションでは、「相手との関係を良好に保ち、相手に前向きな行動を促す」というコミュニケーションの実効性を発揮することがない。


挨拶を例にとって考えてみよう。


例えば、「おはようございます」「いらっしゃいませ」などの挨拶は、極めて基本的なコミュニケーションである。しかしながら、相手の目を見ながら笑顔で「おはようございます」「いらっしゃいませ」と言った時に、初めてコミュニケーションとしての効果を発揮することになる。


もしも、相手の目を見ることなく、笑顔も見せずに「おはようございます」「いらっしゃいませ」と言ったとしたら、相手との関係を良好に保つことは全く期待できない。もちろん、相手に前向きな行動を促すことも決してない。



「口元の表情」の変化が見えない “マスク付き” コミュニケーション

現在、新型コロナウイルス感染症の蔓延対策として、多くの場でマスクを付けることが要求されている。実は、マスクを付けるという行為は、ビジネスコミュニケーションに極めて大きな影響を与えるという特徴がある。コミュニケーションの基礎的技術のひとつである『スマイル』の効果が、大きく減殺されてしまうからである。


笑顔を作るとき、最も大きな変化が現れるのは「口元の表情」である。人は相手の口角が上がり、歯が見えた状態を視覚情報として認識すると、他の情報とも合わせて判断し「笑っている」と感じることになる。


ところが、マスクを付けることにより「口元の表情」が完全に見えない状態では、仮に笑顔を作っていたとしても、そのことが相手には極めて伝わりにくい。その結果、コミュニケーションにより相手との関係を良好に保つことが、非常に困難な状況になるものである。


これが、コロナ禍におけるマスク付きコミュニケーションの、最大のウイークポイントといえる。



マスク時は「目元の表情」を強調することが有効

それでは、ビジネスの場でマスクを付けたまま効果的なコミュニケーションを行うには、どうすればよいのだろうか。2つの方法をご紹介しよう。


1番目は「目元の表情」の変化をオーバーに表現することである。


笑顔を作るとき、「口元の表情」と合わせて大きな変化が現れる点が、もうひとつ存在する。「目元の表情」である。


人は笑顔になるとき、目尻が下がり、目が細くなるものである。そこで、マスクを付けていて「口元の表情」を見せられない分、目尻を下げて目を細めるという表情の変化を大げさとも思えるくらいに表現するとよい。


そうすれば、「目元の表情」の変化だけで『スマイル』を感じ取れる確率が非常に高くなる。その結果、コミュニケーションの実効性が発揮されやすくなるものである。


「声の表情」の効果も合わせて活用を

2番目の方法は「声の表情」を意識することである。


声には表情があると言われる。表情には “好ましい表情” もあれば、“好ましくない表情” も存在する。そこで、「声の表情」を可能な限り “好ましい表情” に変化させられれば、『スマイル』の効果が減殺された分を多少なりとも補うことが期待できる。


「声の表情」を好ましくするには、「やや高めの抑揚のある話し方」を心掛けることがポイントとなる。人は、“低い声” よりも “やや高めの声” に好感を持ちやすく、また、“抑揚のない声” よりも “抑揚のある声” に好感を持ちやすいと言われるためである。


“やや高めの声” は背筋を伸ばし、口角を上げて笑顔で声を発するようにすると自然に出すことができる。また、“抑揚のある声” は声の高低を意識することで、表現しやすくなるであろう。


マスクを付けたままのコミュニケーションは、当面の間は継続が求められることになる。少しでも好ましい意思疎通ができるよう、ぜひ「目元の表情」と「声の表情」を意識していただきたい。

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