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令和4年10月から始まった「公金受取口座登録制度」とは

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


公金受取口座登録制度という仕組みをご存じだろうか。令和4年10月からはこの制度を利用し、健康保険の傷病手当金や雇用保険の育児休業給付金などの受け取りが可能になっている。そこで今回は、公金受取口座登録制度を利用した社会保険の給付金受け取りについて見てみよう。



公金受取口座の利用で給付金の申請が簡便に

公金受取口座登録制度とは公的な給付金などの受け取りに使用する目的で、自身の預金口座をマイナンバーと一緒にデジタル庁に事前登録する制度である。登録した口座を公金受取口座と呼び、給付金申請時に同口座への振り込みを指定することで、申請書への預金口座の記載や預金通帳のコピーの添付などが不要になる。そのため、従前よりも申請手続きが簡便になり、迅速な支払いを受けられるとされている。


公金受取口座での給付金の受け取りは、令和4年10月以降、準備が整った団体から順次開始することとされていた。そのため、労災保険、雇用保険及び健保組合が運営する健康保険の給付については同年10月11日から、厚生年金保険の給付ついては同年10月31日から公金受取口座での受け取りが可能になっている。


ただし、同年12月末までは試行運用のため、公金受取口座への振り込みを指定した際にも、申請書に預金口座の記載を求められるケースなどがあるようである。なお、協会けんぽが運営する健康保険の給付については、本稿執筆時点では開始時期が公表されていない。


マイナポータルからオンラインで登録

公金受取口座の登録はマイナンバーカードを用意し、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)からオンライン上で行うことができる。


登録できる口座は本人名義の普通預金や当座預金の口座で、1人1口座のみである。通帳が発行されない口座やインターネット専業銀行の口座でも登録可能なケースが多いが、店名などの屋号が含まれた口座は登録ができない。


また、一旦登録をした公金受取口座は、マイナポータルから事後に別の口座へ変更もできる。制度の利用を辞めたければ、登録した口座情報の削除も可能である。


なお、公金受取口座登録制度の利用に国籍の制限は設けられていない。そのため、外国籍者でもマイナンバーカードの発行を受けていれば、公金受取口座を登録して給付金を受け取ることが可能である。


口座を登録しても預金残高が知られることはない

本制度を利用する上で懸念されるのが、登録した預金口座の情報が本来の用途以外に使用されないかという点である。例えば、「登録口座の預金残高が行政機関にチェックされる」「税務当局が登録口座から税金を強制的に引き落とす」などがないか、利用者の心配は尽きないだろう。


しかしながら、公金受取口座はあくまで給付金の受け取り専用の口座であり、その他の用途には使用しないとされている。従って、公金受取口座登録制度を利用したことで預金残高が行政機関に知られることはなく、登録口座から税金が強制的に引かれることもないようである。


それでも不安感を払拭できなければ、従来どおり給付金の申請書に希望の振込先を記入し、必要に応じて通帳のコピーなどを添付して申請することも可能である。公金受取口座の利用は法律上の義務ではなく、あくまで給付金受け取り時の選択肢の一つだからだ。


公金受取口座登録制度は開始されたばかりの仕組みである。今後、制度利用がどのように進むのか、推移を見守りたい。


【参考】

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